[II-P-166] 肺高血圧を呈する2次孔欠損型心房中隔欠損は乳児期に閉鎖すべきか
Keywords:心房中隔欠損, 肺高血圧, 長期予後
【背景】孤立性2次孔欠損型心房中隔欠損症(以下ASD)では比較的稀に乳児期より肺高血圧(以下PH)を合併する患者がみられるが、device closureの時代における乳児期PH合併症例の治療方針には議論がある。われわれは乳児期ASD/PHに対し早期に外科閉鎖を行ってきたので、その臨床像と予後につき検討する。【対象】1994年以降、エコー上PHを認め乳児期に外科治療を行ったASD患者16例。日齢は82から339日(中央値214日)、体重4.0kgから8.6kg(中央値6.2kg)。2例で左上大静脈遺残を合併、10例は21trisomy合併であった。【結果】13例では術前検査として心臓カテーテル検査が行われた。右室圧/左室圧比率は0.33から0.93 (中央値0.76)、肺血管抵抗1.14から6.0 (同2.4)、肺/体血流比は1.26から3.15 (同1.73)であった。肺生検施行例はなかった。周術期死亡・遠隔死亡はなし。術後内服として9例でberaprost、3例でPDE阻害薬を併用、1例ではさらにbosentanを投与した。術後1か月から3か月のエコー検査で全例とも肺高血圧の改善を認め、術後経過観察期間1年以上の症例ではいずれも内服中止が可能であった。【考察】乳児期ASD/PH患者ではPH進行による肺血管閉塞性病変・心不全の懸念もある。われわれは早期の手術介入が予後を改善すると考え積極的に乳児期に外科治療を行ってきた。短期・長期成績とも良好であり、PHの軽快が得られた。また乳児期にPHを呈する症例では21trisomy合併例が多かったが、予後に関して差はなかった。今後データベースの活用によるさらなる検討が望まれるが、症例数は少ないものの我々の治療戦略は妥当と考えられた。【結語】乳児期ASD/PHに対する早期手術の成績は良好で、PHの改善が期待できる。PHを認めた場合にはdevice closureを待つことなく早期に手術介入すべきである。