[II-P-167] 大動脈弁上狭窄症術後の遠隔期の検討
キーワード:大動脈弁上狭窄症, 外科治療, 遠隔期
【目的】大動脈弁上狭窄症(Suprvalvular aortic stenosis; SAS)術後の遠隔期に関して検討した.【対象と方法】当院におけるSAS手術術後の患者は9名(男2名,女7名)を対象とした.手術時年齢は3-11才(6.3±3.2才)で,Williams症候群の特徴を備えたものは4例,家族歴を有するものは5例,多発性末梢性肺動脈狭窄の合併は3例である.術前の心臓カテーテル検査によるSAS圧較差は41-100 mm Hg(72±20 mm Hg)であり最狭窄部径は4.0-11.1 mmであった.SASの修復は初期の3例でDotyの方法で,他の6例に対してはMyers法を用いた.右肺動脈のパッチ拡大を1例で同時施行した.【結果】早期:手術死亡1例 (7才女児、Myers変法:一部パッチ拡大)で,高度の左室肥大あり,術前に胸痛の訴えがあった症例で,高度LOSのため死亡した.術直後に左冠動脈の屈曲がMyers法で1例あり,体外循環離脱困難であったが,大動脈基部および弓部・分枝の十分な受動により回復した.遠隔期:観察期間;11.9±8.5年,最長24年で遠隔期死亡はなし.術直後のカテーテル検査での弁上部の圧較差は耐術8例全体で5.1±8.4 mmHgとわずかであった.8例で遠隔期の心エコーでの弁状部の圧較差は4.4±5.4 mm Hgとやはり軽度でありDoty法、Myers法で差はなかった.弁上部の大動脈最小径(% of Normal AoV径)をDoty法およびMyers法で比較すると,術後早期はそれぞれ87±4%Nおよび71±11%NとDoty法で大きかった.しかし遠隔期ではそれぞれ77±25 %Nおよび97±13%NとMyers法で良好な成長が認められた.【まとめ】1. SASの修復術は心室肥大が高度とならないうちに行うことが望ましい.2. Doty法ではSASを大きく拡大することが可能であるのに対し、自己組織のみによるMyers法では術直後はあまり大きくないが遠隔期に良好な成長が得られた.