[II-P-171] 大動脈弁上狭窄症に対するMyers手術の早期中期成績
Keywords:大動脈弁上狭窄症, 外科治療, Myers手術
<はじめに>大動脈弁上狭窄(SVAS)は先天性の左室流出路狭窄を形成する疾患のなかでもまれな疾患である.弁上狭窄の圧較差50mmHg以上,あるいは冠動脈狭窄を合併しているものは手術適応とされ,いくつかの術式が提唱され外科治療により良好な成績が報告されている.当科でMyers手術を施行した5例を報告する.<対象>当科では2000年1月から2014年12月までの期間に8例のSVASに対する手術を経験した.術式はDoty手術1例,Myers手術5例,弁輪拡大を伴う大動脈弁置換術2例(Konno1例,nicks1例)であった.今回はMyers手術の5例を対象とした.年齢は0~16歳(中間値6歳,平均8歳)で,男性2例であった.Williams症候群は1例で認め,弁上狭窄の形態は全例で砂時計型を呈していた.術前の狭窄部圧較差は32-74mmHg(平均52.4mmHg)であった.大動脈弁形態はbicuspid1例認めた.2例で左冠動脈入口部狭窄を認めた. 合併心奇形は4例でPS,1例でVSDを認めた.<結果>左冠動脈入口部狭窄を認めていた1例で,ポンプオフ後の心筋虚血所見に対して再ポンプで狭窄解除術を追加した.周術期死亡なし.最長11年(0-11年のフォロー,平均6.2年)の経過で遠隔期死亡なし,再手術なし,心血管イベントなし.術後の弁上狭窄部の圧較差は0-15mmHg(平均4.5mmHg)と良好で,術後ARが中等度以上のものはみとめなかった.<考察>SVASに対する外科治療は無冠尖/右冠尖をパッチで拡大するDoty手術,各バルサルバ洞をパッチで拡大するBrom手術,各バルサルバ洞を遠位側の上行大動脈壁を用いて拡大するMyers手術の3つの術式が主に用いられていて,これらの変法も報告されている.Myers手術は自己大動脈壁のみで各バルサルバ洞を拡大することより理に適っている術式で当科では第1選択としている.術後圧較差の改善およびAR増悪も無いことから遠隔期成績も良好である.ただし冠動脈入口部病変を伴う場合は積極的な修復術の介入が必要である.