[II-P-176] 当院におけるpulmonary artery sling手術の成績
キーワード:PA sling, 先天性気管狭窄, 肺動脈狭窄
【目的】PA slingは稀な心奇形だが,高率に先天性気管狭窄を合併する.そのためPA sling修復術と同時に気管形成術が行われることが多く,術後のmortalityやmorbidityは気管狭窄の経過に左右される.今回,当院でのPA sling症例を手術や術後の肺動脈形態に焦点を当て報告する.【対象】2010年1月から2014年12月までに手術を施行したPA slingは13例(女児6例,男児7例)で,全例気管病変を有し,13例中11例に気管形成術を併施した.またASDを4例,TOFを2例に合併しPA slingと同時に修復した.手術時月齢は2~22ヵ月(中央値6ヵ月),手術時体重は4.5~9.7kg(中央値6.4kg).手術に関して,気管形成術併施例ではECMO用送血管を使用し,脱血管挿入部位は心内操作の有無等により症例毎に決定している.肺動脈の再建は,肺動脈遮断下に動脈管(索)組織を切除した部分に切開を加えて左肺動脈を移植していたが,最近の症例では動脈管(索)の位置に関わらず主肺動脈の左背側を部分遮断し肺動脈壁の一部を切除し吻合している.【成績】手術死亡や病院死亡は無いが,呼吸器感染を契機に突然死した遠隔期死亡を1例認めた.2~54ヵ月(中央値24ヵ月)の観察期間中,10例に心臓カテーテル・造影検査が行われ,7例に肺動脈バルーン拡張術が施行された(左側4例,両側3例).肺血流シンチを施行した10例中,右肺70%以上4例,右肺30%未満1例であった.【考察】肺動脈再建後は左右肺動脈の血管径の差から左肺動脈の狭窄や血流低下をきたしやすいと考えられるが,気管形成に起因する左肺動脈への圧迫や狭窄,吻合部狭窄も認められ治療介入の頻度が高かった.術後の肺動脈狭窄を回避すべく手術手技の若干の変更や工夫を行っているが,今後の更なる症例の積み重ねと経過観察が必要である.【結論】PA sling術後に末梢性肺動脈狭窄や血流の不均衡を呈する症例は多く,術後の注意深い経過観察と検査,積極的なカテーテル治療が重要である.