[II-P-178] 低形成大動脈弓、重症Ebstein奇形を合併した修正大血管転位症の外科治療成功例
キーワード:修正大血管転位症, エプスタイン奇形, ノーウッド手術
修正大血管転位症にEbstein奇形をともなうことは多いが、重篤な三尖弁閉鎖不全を呈する重症Ebstein奇形を合併した場合には右室から大動脈への前方血流がなくなり胎児期に大動脈弓は低形成となる。重症Ebstein奇形に大動脈弁閉鎖、低形成大動脈弓を合併した修正大血管転位症の成績は不良で救命例の報告は我々の調べえた限り2例のみである。今回、胎児診断のもと出生直後から計画的治療をおこない救命した1例を報告する。【症例】在胎19週で胎児診断され在胎38週5日に予定帝王切開で出生させ心エコーにて診断を確定した。右房は左室に接続(AV discordance)し、左室からは肺動脈が起始(VA discordance)し動脈管を介して下行大動脈につながっていた。左房は拡大した右室に接続し内径2.1mmの狭小上行大動脈とは閉鎖した大動脈弁を介してつながっていた。高度な三尖弁閉鎖不全をともなう拡大した右室は心室中隔を介して左室を圧迫していた。動脈管は太く、心房中隔欠損も十分なサイズがあった。出生時体重2500g。出生5時間後に手術を開始した。体外循環下に三尖弁経由で心室中隔にpledget付3-0糸をかけ右室自由壁を貫いて結紮し右室容積を減じ、さらに三尖弁を径3mmの穴(窓)を付けたパッチで閉鎖した(RV exclusion)。拡大した左房を縫縮し左右の肺動脈にバンドをかけて絞扼した(周径8.5mm)。術後CTRはwall-to-wallから65%に縮小した。PGE1にて動脈管を開存させ生後5か月でNorwood手術+両方向性グレン手術(BCPS)をおこなった。現在、生後1年となりフォンタン手術待機中である。【考察】RV exclusionをともなうStarnes手術は拡大した右室から心室中隔を介した左室への圧迫を減ずる効果があり体心室機能を改善させ有効であったと考える。また、胎児診断に基づき計画的に治療を開始できたことにより病態を悪化させずに有利な条件で治療ができたことが治療成功の鍵であると考える。