[II-S07-01] 新生児・乳児期の大動脈狭窄症に対する治療戦略と遠隔期成績
Keywords:新生児・乳児, 外科治療, 大動脈弁狭窄
【目的】新生児、乳児期の大動脈弁狭窄症に対し、従来open aortic valvotomy(OAV)が行われてきた。その成績は良好とはいえず、現在balloon aortic valvotomy(BAV)がその治療の主流となってきた。このBAV術直後の死亡は減少したが、合併症は多く、大動脈弁の再狭窄、逆流は術後比較的早期にRoss-Konnoなどの手術が必要となる。この疾患群にOAVを第1選択としている我々の治療成績の妥当性につき考察する。【対象】1994~2014年の20年間にOAVを行った1歳未満症の22例を対象とした。手術時年齢は中央値24(0~356)日で体重は中央値3.5(2.0~7.2)kgであった。大動脈弁形態はmonocuspが4例、bicuspが13例、tricuspが5例であった。【方法】体外循環下に交連切開と粘液性組織の摘徐を行った。この粘液性組織の切除は大動脈弁の開口部確保とともに、可動性を良好にさせ、また弁の接合性の向上により、順行性のFlowの改善と弁逆流の防止に寄与している。この術式の併用は通常のOAVのみでは得られない、我々の術式の最大の利点である。【結果】圧較差は術前、後各々80.0±27.3mmHg、35.3±12.0mmHgへと優位に改善した。遠隔死を1例に認めた。術後再介入を要したものは6例でいずれもASの再発によるものであった。5例は再度OAVを行い、1例は他院でBAVが行われた。術後1.5年以内の再狭窄は遠隔死亡の1例を含めた4例に認めた。死亡及び再手術の回避率は術後5、10年で81.6%、63.4%であった。再々手術は3例で、2例でRoss手術を、他の1例は人工弁置換術を行った。生存症例の弁置換回避率は術後5、10年で100%、75%であった。【結論】この疾患群は交連部の癒合と、粘液性組織が多くの症例に認められた。BVPではこの粘液性組織の切除は不可能であり、これがBVPの限界の1つと思われる。以上の結果から正確な交連部の切開術と粘液性組織の切除はこの疾患群の成績向上のための第一選択と考えられた。