[II-S09-01] 座長の言葉:わが国における小児心臓移植の現状
キーワード:心臓移植, 心筋症, 補助人工心臓
改正法施行後、15歳未満の小児からも脳死臓器提供が可能となり、我が国でも小さな体の小児の心臓移植が可能になった。改正後、2015年2月末までに9例の18歳未満(15歳未満7例)のドナーから心臓移植が行われ、全て小児に移植された。成人からの移植例を含め、これまで国内で14名の小児心臓移植が行われたが、移植後10年以内の死亡例はなく、成績は良好である。しかし、最初の4例の待機期間が1年以内であったが、5例目以降は800日以上となり、改正法施行前と同様小児でも待機期間が長くなっている。そのため、待機中に左心補助人工心臓(LVAS)の装着を要する症例も漸増しており、体格の大きな小児では積極的に埋め込み型LVASを装着して、待機中・移植後のQOLを向上させる試みが必要となっている。一方、日本小児循環器学会の全国調査では、毎年30-50例の心臓移植適応患者が報告されており、ドナー不足は成人に比べて更に深刻である。代表的な適応疾患は、拡張型心筋症、拘束型心筋症である。また、Berlin Heartは治験を修了し、6例が装着され、良好な成績(国内1例、海外3例移植、2例待機中)を挙げており、本年9月には保険収載される見込みである。6歳未満のドナーが未だに2例であること、医学的緊急度2で移植の必要となる拘束型心筋症が多いことから、2014年には再び海外渡航心臓移植患者が増加に転じており、国内での小児臓器提供をいかに増やすか、国レベルでの対策が必要である。これまで小児期に心肺同時移植を受けた症例はないが、国内で施行された心肺移植者は、両大血管右室起始のEisenmenger症候群と18歳未満で高度肺高結になった拘束型心筋症であり、小児循環器医の関わりは大きい。また、左室低形成に伴う肺高血圧の小児3例が国内外で心肺同時移植準備中に死亡しており、我が国においても小児心肺同時移植の体制整備も必要である。