[II-S09-03] 小児心移植後における遠隔期合併症の診断と治療
キーワード:小児心移植, 移植心冠動脈病変, 移植後リンパ増殖性疾患
今後の増加が予想されるわが国の小児心移植の遠隔期管理について、自験例34件(移植時年齢:5か月~16歳、平均8.0歳、移植後最長経過観察24年)と海外のデータより考察する。 国際心・肺移植学会(ISHLT)のレジストリーでは、ここ10年間の小児心移植の死因は、移植後30日~3年で急性拒絶反応が第一位(18%)であり、その後は移植心冠動脈病変(CAV)が増え、5年以降は第一死因となる。その他の遠隔期問題として、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、腎機能障害がある。 CAVは、冠動脈予備能低下、血管内超音波法(IVUS)での内膜肥厚で診断され、成人心移植に比して有意に低出現であるが、小児でも移植時年齢の上昇につれて頻度が増す。PCIやCABGの血行再建術は標準的治療ではなく、proliferation signal inhibitorであるmTOR阻害薬が期待される(7自験例で使用)が、脂質異常症、創傷治癒遅延、間質性肺炎、性腺機能低下、等に注意が必要である。 小児移植後悪性腫瘍は移植後リンパ増殖性疾患(Post-Transplant Lymphoproliferative Disorder:PTLD)であり、自験5例においても、従来の免疫抑制薬の減量~中止やmTOR阻害薬使用が効果的である。 ISHLTレジストリーによると、血清Cr>2.5mg/dlの腎機能障害例は、移植10年後に11%まで増加し、その半数に透析療法や腎移植が必要になる。自験8例では、移植術後1~2年目のカルシニューリン阻害薬(CNI)が比較的高濃度で推移中の時期はCcr低下を認めたが、その後CNI血中濃度が低下するにつれて回復する症例もある。近年はmTOR阻害薬を併用しCNIを減ずることで、その回復を早める可能性もある。 小児心移植後の予後は良好で、自験4例が死亡または再移植例であるが、移植後QOLは極めて良好で、移植後の成長も順調である。