第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム12
症例から学ぶフォンタン循環病態:~フォンタン循環への選択からその破綻への対応~

2015年7月17日(金) 14:40 〜 16:40 第2会場 (1F ペガサス B)

座長:
大内 秀雄 (国立循環器病研究センター)
先崎 秀明 (埼玉医科大学総合医療センター)

II-S12-01~II-S12-04

[II-S12-01] Fontan手術の達成率を如何に高めるか-遠隔成績症例の検討した当院の段階的手術治療-

笠原 真悟, 堀尾 直裕, 小林 純子, 石神 修大, 藤井 泰宏, 黒子 洋介, 小谷 恭弘, 増田 善逸, 吉積 功, 新井 禎彦, 佐野 俊二 (岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 心臓血管外科)

キーワード:外科治療, フォンタン手術, 遠隔成績

(はじめに)段階的手術治療戦略が一般化し、機能的単心室症に対してもFontan手術は適応拡大され術後早期の成績は安定した。それゆえ、すべての最終目標がFontan手術と拡大解釈され、長期成績において多くの問題となったのも事実である。術後遠隔成績に関与する因子について検討し、当院の基準を再考する。(対象、方法)1991年から2014年に当院でFontan手術を行った410例を対象とした。またConversion症例は除外した。年齢は中央値3(1-52)才、術前SpO2は中央値82(42-88)%、肺動脈圧(PAp)は中央値11(5-25)mmHg、PA indexは中央値262(103-672)mm2/m2、systemic chamberのEFは中央値63(31-96)%であった。当院ではlow flow strategyを基本とし、BDG、さらにFontan手術前には積極的な弁形成術、Damus-Kaye-Stansel(DKS)吻合の採用、積極的な肺動脈形成術を行っている。(結果)生存率は1年、5年、10年で96.7%、94.1%、93.3%であった。死亡例は20例で、病院死は4例、遠隔死は16例。生存例と死亡例を単変量解析し、術前因子でPAp(p=0.0029)、右房圧 (p=0.0009)、心室拡張末期圧(p=0.0137)、CTR(p=0.0002)、房室弁逆流の存在(p=0.0002)、に有意差を認めた。SaO2、PAp、PA index、EFには有意差なし。手術、および術後因子として胸腔ドレナージ必要日数(p=0.0012)挿管時間(p=0.0001)に有意差を認め、大動脈遮断時間、人工心肺時間、およびFenestrationの有無には有意差はなし。更に基礎疾患での解剖学的な特徴としてはHeterotaxyの合併(p=0.0194)とTAPVCの合併(p=0.0009)に有意差を認めた。(考察、結語)積極的なFontan手術という立場で治療を継続しているが、多くの危険因子を規定しているものはTAPVCを合併するHeterotaxy症候群であることがわかった。段階的手術治療を行ったとしても、この基礎疾患を変えることは不可能であり、この疾患群については治療目標を再考しなければならない。