第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム(多領域専門職部門)

シンポジウム2(多領域専門職部門)
先天性心疾患をもち地域に帰る子どもへの多職種支援

2015年7月17日(金) 16:10 〜 17:40 第7会場 (1F シリウス)

座長:
水野 芳子 (千葉県循環器病センター)
山崎 康祥 (藍野大学医療保健学部 臨床工学科)

II-TRS2-01~II-TRS2-05

[II-TRS2-02] 小児地域包括ケア -医療ケアが必要な子どもを地域で支える-

前田 浩利 (医療法人財団はるたか会 あおぞら診療所)

今、日常的に医療機器と医療ケアを必要とする子どもたちが、社会資源の少ない地域社会において急激に増加している。埼玉医科大学総合医療センター小児科小児在宅医療支援グループの全国調査の報告では、2004年に33.6人であった人工呼吸器を装着してNICUから退院する児が、2012年には約5倍の149.5人になっている。しかも、そのほとんどは最終的に自宅に帰っている。また、その実数は明らかにつかめてはいないが、重度の先天性心疾患や食道閉鎖症の術後に、気管切開、人工呼吸器などの医療ケアを行いながら自宅に帰る子どもも増えている。これらの子どもたちを地域で受けとめるためには、多職種連携が必須であり、地域に一人ひとりのために個別に在宅医療支援のためのチームをつくらなければならない。そのためのキーワードが、「福祉と医療の協働」「地域と病院の協働」である。しかしこれらの協働は、現状では困難である。成人には、介護保険という医療と介護(福祉)を繋ぐ枠組みがあり、医療職と介護職の連携を調整する介護支援専門員(ケアマネジャー)がいる。ケアマネジャーは看護師など医療知識の豊富な人材が多い。しかし、小児が利用する障害福祉サービスは、医療との連携のシステムが未整備で、障害福祉サービスのコーディネーターである相談支援専門員もその育成に医療知識を学ぶ教育プログラムが不十分だった。また、病院と地域の壁も厚く、特にNICUやPICUがある高度医療機関と地域の連携は困難である。このように多くの課題がある中、高度な医療ケアを必要とする子どもを地域で受けとめるための医療と福祉、地域と病院の連携のモデルが、小児の地域包括ケアである。当法人では、これまで500例以上の小児の在宅医療の経験がある。それを基に当院における、地域包括ケアのチーム作りについて述べたい。