[II-YB09-05] 小児心不全に対する心臓内自己幹細胞移植治療の標準医療化へ向けた取り組み
キーワード:小児心不全, 自己心臓内幹細胞移植療法, 標準化医療
【背景】我が国の再生医療は研究レベルでは世界のトップレベルにあるが、再生医療製品の実用化件数は欧米と比較すると著しく少なく、さらに治療対象患者が多いと見込まれる神経・心臓疾患の再生医療品開発も大きく遅れをとっている。従来の法律では承認までの道筋に長時間を要した事が一因であるが、2014年11月に施行された2つの法律(医薬品医療機器等法と再生医療等安全性確保法)では、一定期間、条件付きであるが承認が得られ、市販後に検証して再度承認を検討する新しい方針が示された。この改正により、患者へのアクセスがより早くなると考えられる。岡山大学病院では心筋幹細胞の基礎研究、大中型動物を用いた前臨床試験に基づき、2011年1月から2012年2月にかけて、左心低形成症候群14症例を対象に心筋幹細胞を用いた自家移植療法の第1相臨床試験(TICAP:NCT01273857)を実施し、18ヶ月経過時点での移植療法の安全性と有効性を世界に先駆け報告した。現在は適応を機能的単心室症にまで拡大し、34症例を対象にしたrandomized-controlled trial(PERSEUS:NCT01829750)を実施中である。【目的】岡山大学での心筋幹細胞培養技術と経験を出資企業に導出し外部委託する事で、多施設間での共同臨床治験を迅速に行えるようする。【方法と結果】心臓手術の際に得られた右心房由来の組織から心筋幹細胞の培養技術を指導し、培養された心筋幹細胞の特性と再現性を確認した。細胞の増殖能、形態や間葉系細胞表面マーカーの発現に差は認めず培養技術に関しては外部へ継承ができた。今後はこれらの結果を医薬品医療品総合機構 (PMDA)に報告し、承認審査と品質の同等性調査の段階にまで到達している。【結語】再生医療は従来の手法では治療困難とされている重症疾患に対する新たな代替医療法として期待は大きく、今後、小児心不全に対する心臓内自己幹細胞移植治療が標準保険医療化として社会還元できるように取り組んでいく。