[III-O-06] 小児における植込み型補助人工心臓治療
キーワード:植込み型補助人工心臓, 重症心不全, 小児心不全
【背景】植込み型補助人工心臓(VAD)は成人における重症心不全治療において欠かせないデバイスとなってきた。小型軽量化が進むにつれて、18歳未満の小児においても移植適応を満たし、体格を含む条件が整えば植込み型VADが使用できるようになってきた。【目的】われわれの10年以上・170例以上の経験から、小児におけるVAD治療、特に植込み型VADの現状を解析する。【方法】2015年1月までに172例のVAD装着を経験した。18歳未満の小児おけるVAD装着は22例(4ヶ月~17歳)あり、使用したデバイスは植込み型5例、ニプロ型11例、Berlin Heart 2例、RotaFlow 4例であった。このうち、植込み型VAD5例に焦点を当てた。【結果】5名の術前データは、年齢11~17歳(平均14.8歳)、男児4例、体重32~66kg(平均50.6kg)、体表面積(BSA)1.17~1.86m2(平均1.54m2)であった。重症度は、INTERMACS profile 2が2例、profile 3 が3例であった。原疾患は拡張型心筋症4例、拡張相肥大型心筋症1例であった。BSAが1.5m2よりも大きな小児に対しては、EVAHEART 2例、HeartMate II 1例を装着した。BSAが1.3m2より小さな2人(11歳:1.17, 14歳:1.24)にはJarvik 2000を装着した。僧帽弁輪形成を4例、三尖弁輪形成を2例、三尖弁形成を1例に併施した。全例心拍動下で手技を完遂し、人工心肺時間は82~222分(平均149分)であった。全例無輸血で手術を終了した。術後経過は良好で、最近装着されて現在入院中の1例を除き、平均46日で自宅退院した。最近の1例を除く4例の補助期間は、60~998日(平均531日)で、退院4例中、2例は復学、1例は復学準備中、1例は学校が遠方のために断念した。1例はすでに心臓移植へ到達した。【結論】小児における重症心不全治療は大きく変りつつある。体表面積1.1m2以上であれば、植込み型VADによる治療が有効である。