[III-O-08] ECMO補助におけるカニュレーション部位別の問題と工夫
Keywords:ECMO, 左心減圧, 回路交換
【目的】当科での過去10年間の経験からECMOのカニュレーション部位別の特性を把握し, ECMO補助による確かな循環補助確立と侵襲低減に必要な対策を検討する. 【対象】2005年から2014年の間に正中または頚部カニュレーションでV-A ECMO補助がなされた71例を対象とした. 導入時月齢中央値4ヶ月 (range, 0d - 12y), 体重中央値4.9kg (range, 1.9-34), 心肺蘇生中の導入例36例, 術中人工心肺からの移行例20例, 劇症型心筋炎5例であった. カニュレーション部位は正中が40例 (C群), 頚部が20例 (N群), 回路交換を機に正中から頚部へ移行した例が11例 (CN群) であった. 【結果】ECMO稼働時間中央値はC群104時間/N群130時間/CN群399時間 (p < 0.01), 1回路あたりの稼働時間中央値はC群86時間/N群121時間/CN群119時間 (p < 0.01), ECMO離脱率はC群68%/N群50%/CN群73% (p = 0.32) であった. 止血目的にカニュレーション部位を再開創した回数中央値はC群1回/N群0回/CN群2回 (p < 0.01) であり, C群1例とCN群正中カニュレーション時1例では出血のために送血路変更を要した. 脱血路追加はC群2例(LA2例)/N群3例(LA2例, RA1例)/CN群2例(PA1例, FV1例)で行い, N群の直近の1例ではICUにて左前第3肋間小開胸で左心耳から左心脱血を追加した. カニュレーション部位別の7日間回路交換回避率は正中22%, 頚部49% (p < 0.01) であった. 【結論】頚部カニュレーションでは止血目的の再開創および回路交換の低減が可能であった. 頚部カニュレーションで左心減圧が必要な際は, 左前第3肋間小開胸からの左心耳脱血で患者を移動させることなく低侵襲に実現可能であった.