第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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一般口演

1-13 術後遠隔期・合併症・発達

一般口演-21
術後遠隔期・合併症(フォンタン)

Sat. Jul 18, 2015 1:30 PM - 2:20 PM 第4会場 (1F ジュピター)

座長:
平松 健司 (東京女子医科大学)
西原 栄起 (大垣市民病院)

III-O-11~III-O-15

[III-O-14] フォンタン術後症例で観察される肝臓超音波高輝度スポットの病理組織学的検討

井門 浩美1, 大内 秀雄2, 松山 高明3, 田中 教雄1, 植田 初江3, 山田 修2 (1.国立循環器病研究センター 臨床検査部, 2.国立循環器病研究センター 小児循環器科, 3.国立循環器病研究センター 病理部)

Keywords:肝臓超音波, 高輝度スポット, 病理

【背景】肝臓実質の線維化を伴う肝硬変等の肝障害はフォンタン(F)手術後遠隔期の予後を規定する一因であるため、遠隔期の管理向上は重要である。我々は超音波による肝実質性状の評価の有用性を報告してきた。特に、F術後遠隔期患者では高頻度に高輝度の異常な斑点像(高輝度スポット:HS)が観察されることを報告してきたが、HSの病理学的意義は不明である。【目的】 高輝度スポット(HS)とそれに相当する組織像を比較し、HSを形成する組織像を明らかにすること。【対象】 病理解剖を行ったF例2例 (14歳男児、21歳女性) 、Glenn術後例(G例) 1例 (32歳男性)、Blalock-Taussigシャント症例(BT例) 1例 (39歳男性) 。【方法】 肝臓は解剖時に2 cm毎の両葉を含むスライスを作成しホルマリン固定。固定後に脱気水で満たした水槽内で標本を保持し、肝表面より超音波断層法を用いてHSを検索した。複数のHSが観察される部位とHSを認めない部位を切り出し、その超音波画像と相応する断面の組織標本を作成し、シリウスレッド染色により線維化の分布形態を比較した。【結果】 超音波では、F例およびG例にHSを散在性に認めたが、BT例には認めなかった。組織標本では、4例ともに線維化病変を認めたが、F例およびG例に肝小葉内に不規則に広がる高密度の線維化を多く認めた。HSと組織所見の比較では不規則で細長い線維化領域と肝細胞の脂肪化した部分が隣接する領域の一部がHSの輪郭に一致していた。線維化または脂肪化の単独病変ではHSに一致していなかった。【結語】超音波による肝実質のHSは、長期的F循環に起因する肝小葉内の有意な細長い線維化領域と肝細胞の変性した脂肪化領域の隣接が異なる音響インピーダンスの境界を形成することで生じることが判明した。従って、HSはこれら線維化や脂肪化等の高度な肝臓実質の変化の一部と推察され、F術後を含めた長期肝臓うっ血に起因する肝実質障害を反映する有用な指標である。