[III-O-15] Fontan術後、血栓症に関する長期遠隔期成績
キーワード:Fontan, Thrombotic Complications, Long-term
【背景】Fontan術後の抗凝固療法は近年の無作為割り付け試験により短期の有用性が示されたが、長期の有効性は不明であり、依然として議論が別れるところである。【目的】当院では、これまで、人工血管を使用しないFontan手術後の予防的抗凝固療法は施行しない方針で治療をおこなってきた。この研究の目的はそれらの患者の長期予後に関して明らかにすることである。【方法】対象患者は、1975年から2004年までに施行されたAPC Fontan、Bjork Fontan、自己組織によるlateral tunnel型TCPC術後患者96例。後ろ向きに長期予後、長期の血栓塞栓症の発症率、現在の抗凝固、抗血小板療法の施行を観察した。【結果】平均年齢は 39±7歳、Fontan術後の追跡期間は 24±7年であった。死亡例は10例、Fontan術後平均24±6年であり、全例が術後10年以上の症例であった。追跡期間中に血栓症イベントは20例(21%)発症した。Fontan術後、血栓症フリー率は、1年、5年、10年、15年、20年で100%、100%、99%、96%、91%であった。2例は体心室系に血栓を認め、内1例は心房細動を合併した左心耳血栓であった。それ以外の症例は静脈系血栓であった。症状を伴った血栓症は5例(5%)認め、3例は肺血栓塞栓症、1例は末梢塞栓、1例は脳梗塞であった。肺血栓塞栓症により1例が死亡している。血栓症発症を認めた20例で内服治療は、ワーファリン単独16例、アスピリン単独1例、両者内服3例であった。また、血栓に対して3例でTCPC変換術が施行された。【結語】Fontan術後の血栓症発症率は10年で1%、20年でも9%と低値であった。しかし、今後、血栓症の発症率の増加が予測され厳重な経過観察が必要である。