第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

1-06 心臓血管機能

一般口演-22
心臓血管機能

2015年7月18日(土) 09:00 〜 09:50 第5会場 (1F アポロン A)

座長:
森 善樹 (聖隷浜松病院)
増谷 聡 (埼玉医科大学総合医療センター)

III-O-16~III-O-20

[III-O-16] アントラサイクリン系薬剤を使用した小児がん患者のTissue Mitral Annular Displacement(TMAD)による心機能評価

西川 幸佑, 森下 祐馬, 久保 慎吾, 浅田 大, 河井 容子, 池田 和幸, 中川 由美, 糸井 利幸, 浜岡 建城 (京都府立医科大学大学院医学研究科 小児循環器腎臓科)

キーワード:TMAD, アントラサイクリン, 心毒性

【背景】心毒性を有するアントラサイクリン系薬剤を用いた治療に際しては、不顕性も含めた心機能低下の早期検出が重要である。最近注目されているspeckle trackingを用いたTMADは、左室長軸方向の収縮性を評価する鋭敏な方法である。【目的】今回TMADがアントラサイクリン系薬剤による心機能低下の指標として有用であるか、また薬剤の総投与量に依存するかを評価する。【方法】アントラサイクリン系抗がん剤を使用した小児がん患者22例、および健常対照児22例のEF, E/E’, TMAD, global longitudinal strainを比較した(t検定)。また投与量をアドリアマイシン量に変換し、TMADが総投与量に依存するかをピアソンの検定を用い評価した。TMADは僧帽弁輪部2点の中点と心尖部にROIを設定し、その移動距離の変化率として算出した。【結果】がん患者群、健常対照児群において、EF (73.6±5.4% vs 76.1±5.3% p=0.12), E/E’ (7.5±2.0 vs 7.0±1.6 p=0.38), global strain (-21.5±4.0% vs -20.8±2.9% p=0.49)では両者に差は無かった。それに対しTMAD (Midpt 13.5±3.0% vs 17.2±1.9% p<0.05)はがん患者群で有意に低下していた。またアドリアマイシン投与量は(191±138mg/m2)で、総投与量とTMADの間には有意に相関を認めた(r2=0.18 p=0.04)。【考察/結論】現在小児がんの各種プロトコールでは、アントラサイクリン系薬剤による心機能はEFで評価を行い、その結果により薬剤量の調整を行っている。アントラサイクリン系薬剤による心機能障害は、短軸方向の運動低下よりも長軸方向の運動低下が先行することが示唆されているが、今回の検討でもTMADがEFより鋭敏に左心室機能異常を検出できた。TMADは測定方法も簡便であり、今後TMADの測定がアントラサイクリン系薬剤による心機能低下を早期に発見、治療出来る可能性がある。