[III-O-18] Single-beat Estimation of Preload Recruitable Stroke Work
キーワード:心機能, 圧容量曲線, 心不全
【背景】前負荷を変化させた際の収縮末期圧容量関係(ESPVR)から求められるEmaxは、負荷依存性の比較的低い心収縮能指標である。EmaxはSingle-beatから下大静脈閉塞をせずに求める方法が開発され、臨床的により広く応用されるようになったが、後負荷に影響を受けることが知られている。心室の1回仕事量と拡張末期容積の関係はPreload recruitable stroke work (PRSW)と呼ばれ、Emaxよりさらに負荷依存性が低く、再現性も高い心収縮能の指標であるが、精度よくSingle-beatで求める方法は未だ確立していない。今回我々は、PRSWをSingle-beatから予測する方法を考案したので、その予測精度について検討した。【方法】5匹の成犬の心臓に左室圧モニター、左心室壁間距離・壁厚計測用の超音波センサーを埋め込み、覚醒下で心室の心室圧距離関係の計測を行った。ベースライン、ペーシング、ドブタミン投与の3つの状態で下大静脈閉塞を行いPRSWを求めた。また、ストレスストレイン関係に基づいた非線形ESPVRを仮定し、心室壁厚と定常状態のSingle beatの圧距離曲線の形状からPRSWを予測した。【結果】ベースラインにおける心拍数は、118±40bpmであった。PRSWのX切片(Vw)の同一個体内での変動は、実測値で1.5±0.7mm、予測値1.4±1.1mmとどちらも同一個体内でほぼ一定であった。心収縮の指標であるPRSWの傾き(Mw)の実測値と予測値は、ベースラインでr=0.85 (83±9.7 vs 86±15mmHg)、ペーシング下でr=0.85 (82±11 vs 79±16mmHg)、ドブタミン投与下でr=0.95 (123±21 vs 123±23mmHg)とそれぞれの状態で強い相関を認めた。全体としてMwの実測値と予測値はr=0.96 (p<0.0001)と強い相関関係を示した。【考察】我々の方法は様々な条件下で実測PRSWを、定常状態のデータのみを用いて精度高く予測することができ、今後先天性心疾患の病態解明における簡便な方法論として非常に役立つ可能性が強く示唆された。