[III-P-004] 大動脈弓および分枝異常を伴う大血管スイッチ術を施行した完全大血管転位症-両側動脈管による血管輪を合併した1例-
キーワード:血管輪, 完全大血管転位症, 両側動脈管
【背景】1986年以降大血管スイッチ手術を施行したD-TGA(IまたはII型) 124例中、19例(15%)に大動脈弓およびその分枝異常を伴っていた。内訳はCOA 9例、IAA 5例、右鎖骨下動脈起始異常(Aberr.RSA) 3例、右大動脈弓(RAA) 2例(うち両側PDA 1例)であった。COA・IAAのうち13例は二期的修復を行った。RAAおよび両側PDAを合併した1例は胎児診断がなされていたにも関わらず非常に重篤な経過をたどったため報告する。【症例】在胎34週に胎児心エコーでD-TGA、VSD、RAA、Aberr.LSA、Lt.PDA と診断された。在胎38週に胎児機能不全のため緊急帝王切開、出生時体重2706gで仮死なく出生した。ただちにLipoPGE1を開始したが、急速な肺血流増加による心不全が進行した。日齢9の造影CTにより、RAA、Aberr. LSA、両側PDAを合併した血管輪と診断したが気管圧迫はなかった。日齢11に大血管スイッチ手術(Lecompte法)、VSD閉鎖、ASD閉鎖を施行した。血管輪を解除するため両側PDAは切離した。術後も喘鳴が持続し啼泣を契機に徐脈となり、人工呼吸器管理を開始した。気管支鏡で主気管支が背側より圧迫され、造影CTで上行大動脈と拡張した左鎖骨下動脈起始部による圧迫が疑われた。【考察】D-TGAに合併したRAA、Aberr.LSA、両側PDAを合併した血管輪症例を経験した。過去の報告1例は死亡しており、希少な症例であった。Lecompte法を用いた肺動脈再建による上行大動脈の後方偏位と、左鎖骨下動脈起始部の拡張による気管圧迫の可能性が考えられた。