[III-P-007] 類洞交通を介した駆出による上行大動脈順行性血流と冠状動脈灌流を認めた大動脈弁閉鎖の1例
キーワード:類洞交通, 冠循環, 左心低形成
【背景】左心・右心低形成を有する症例では様々な程度の類洞交通による冠状動脈灌流異常が認められる。一般的に左心低形成では類洞交通は少なく、動脈管経由で上行大動脈を逆流した血流で冠状動脈灌流が形成される。純型肺動脈閉鎖などの右室低形成で類洞交通を有する症例では収縮期・拡張期に各々右室・大動脈から冠状動脈へ血流が供給される。我々は大動脈弁閉鎖であるが類洞交通を介した上行大動脈の順行性血流を認め、体循環および冠灌流が類洞交通からの駆出依存であった稀有な症例を経験した。【症例】出生体重2.7kg、日齢0の男児である。心エコー検査で、修正大血管転換、三尖弁狭窄、右室低形成、大動脈弁閉鎖、大動脈弓低形成、動脈管開存、卵円孔開存と診断した。大きな類洞交通および拡張した冠状動脈が認められた。右室の収縮に伴って類洞交通経由で冠状動脈を逆流し上行大動脈へ順行性に血流が駆出されていた。LipoPGE1で管理し日齢14に両側肺動脈絞扼術を施行した。術後9日に心臓カテーテル検査を施行し、上記診断と類洞交通と血行動態を確認した。日齢55にNorwood手術を施行した。【考察】本症例は左心低形成類縁疾患である右室低形成・大動脈閉鎖の症例である。一般的に右室低形成・左室低形成ともに冠状動脈および上行大動脈血流は特異な循環動態を認めるが、本症例と類似の循環を呈した報告は無い。本症例は右室壁肥厚と肉柱の形成が強くカテコラミンの使用は類洞交通の収縮時狭窄を増悪させる可能性があること、血管拡張剤使用は類洞交通から上行大動脈への血流増加による冠血流の盗血を来す可能性があること、BASによる大きな心房中隔裂開は右室からの類洞交通への駆出を低下させる危険性があることなどに注意する必要があった。【結語】極めて稀な類洞交通の循環動態を呈した症例を経験した。冠灌流の変化を検討しながら加療をすすめていく必要があると考えた。