第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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Sat. Jul 18, 2015 11:20 AM - 11:56 AM ポスター会場 (1F オリオン A+B)

座長:小野 博 (国立成育医療研究センター)

III-P-015~III-P-020

[III-P-018] 三尖弁輪収縮期移動距離(TAPSE)を用いた小児拡張型心筋症の予後予測の検討

小川 陽介, 進藤 考洋, 田中 優, 平田 陽一郎, 犬塚 亮, 清水 信隆 (東京大学医学部附属病院 小児科)

Keywords:TAPSE, 拡張型心筋症, 右心不全

【背景】右心不全の存在は拡張型心筋症(DCM)をはじめとする心不全患者の予後不良因子である。成人心不全患者においては、超音波検査での三尖弁収縮期移動距離(TAPSE)が右心機能を予測する簡便かつ再現性の高い指標として注目されているが、体格の個体差が大きい小児ではその意義について十分に検討されていない。われわれはTAPSEを年齢・体格の異なる小児にも適応できるように補正した指標を新たに考案し、小児DCM患者における予後予測因子としての妥当性について考察した。【方法】TAPSEを三尖弁輪部-右心室心尖部間距離で割ったものを新たにeTAPSEと定義し、2014年5月から2015年1月までの間に当院もしくは関連病院で超音波検査を実施した正常小児58例およびDCM患児10例に適用した。さらに、DCM患児のうち補助人工心臓(VAD)挿入に至った症例と挿入を回避できた症例のTAPSE、eTAPSEを比較検討した。【結果】正常小児のeTAPSEの値は0.25-0.41(平均0.33±0.040)の範囲にあり、年齢や体格による差は認めなかった。VAD挿入を要したDCM患児5例と要さなかった患児5例のeTAPSEの値はそれぞれ0.13-0.16(平均0.14±0.013)、0.21-0.33(平均0.27±0.041)でVAD挿入に至った症例ではeTAPSEの値に有意な低下が認められた(p=0.001)。一方、補正前のTAPSEでもVAD挿入群と非挿入群とで有意差は認めたものの、VAD挿入群に正常範囲内のTAPSEを示す症例も観察された。【結論】eTAPSEは年齢や体格に関係なく、小児の右心機能を推定する指標として有用であると考えられた。また、小児DCM患者においてTAPSEおよびeTAPSEの低下は予後不良因子であり、eTAPSEは補正前のTAPSEよりも鋭敏な指標であることが示唆された。すでに成人ではTAPSEによる右心機能評価の有効性が証明されているが、小児においてもeTAPSEを用いて右心不全の存在を推定することで、小児DCM患者の予後予測ならびに治療の選択に寄与することが期待できる。