[III-P-023] 小児劇症型心筋炎4例の臨床経過と病理所見に関する検討
Keywords:劇症型心筋炎, 心筋カルシウム沈着, 病理組織
補助循環の積極的な使用により劇症型心筋炎(Fulminant Myocarditis:FMC)の救命率は上昇傾向にある. 救命できた症例の多くは心機能の回復を認め ,長期にわたって心機能を維持できるとされている.しかし心機能が回復せず心筋炎後心筋症となり補助人工心臓(VAD:Ventricular Assist Device)装着を必要とする症例もある.心機能予後の予測因子は不明であるが,心筋へのカルシウム沈着を認める症例は特に予後不良とされている.当院で経験したFMC4例(男児2名,女児2名)について臨床経過,病理所見を提示し, 細胞内のカルシウム代謝に関与し,また心不全で発現量が減少するといわれているRyR2(Ryanodine Receptor type2),SERCA2a(Sarco-endoplasmic Ca2+-ATPase2) に対する免疫染色を行ったので報告する.[方法]HE染色Masson-Trichrome染色,Von Kossa染色,免疫組織染色(RyR2,SERCA2a他)を行い組織学的検討を行った.[結果]全例で血行動態の破綻による臓器障害を認め,開胸下に心尖部脱血を行いCentral ECMO装着を行った.急性期死亡は1例で,周術期の脳血管障害によるものであった.1例は心機能の回復を認め,9日間のサポートの後ECMOから離脱した.心機能が回復しなかった症例は2例であり,うち1例は移植登録の後補助人工心臓装着を行った.病理所見については全例でリンパ球浸潤を認めておりFMCとして矛盾しない組織像であった.心機能の回復を認めなかった2例では壊死や変性は高度であり著明なカルシウムの沈着を認めた.線維化は全例で軽度であった.正常心筋と比較しRyR2,SERCA2aの免疫染色では明らかな違いを認めず,カルシウム沈着を認めた症例でも明らかな違いは認めなかった.[まとめ]今回検討した4例において,心機能が回復しなかった2例には著明なカルシウム沈着を認めた.全例で線維化は軽度であった.RyR2,SERCA2aについて違いは認められず,カルシウム沈着や,FMCにおける心不全の機序についての考察には至らなかった.