第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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1-11 心不全・心移植

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心不全③

Sat. Jul 18, 2015 10:50 AM - 11:20 AM ポスター会場 (1F オリオン A+B)

座長:山村 健一郎 (九州大学病院)

III-P-050~III-P-054

[III-P-053] mTOR阻害薬エベロリムスを用いて10年間管理した心臓移植術後例

高室 基樹1, 春日 亜衣2, 石田 まどか1, 堀田 智仙2, 長谷山 圭司1, 畠山 欣也2, 横澤 正人1 (1.北海道立子ども総合医療・療育センター 小児循環器内科, 2.札幌医科大学 小児科学講座)

Keywords:心臓移植, mTOR阻害薬, CNi

【緒言】心臓移植術後の免疫抑制療法はステロイド、カルシニューリン阻害薬(CNi)であるシクロスポリン(CyA)、MMFの三剤併用が主に用いられている。mTOR阻害薬エベロリムス(EVE)は主に欧州で用いられ、本邦では2008年に心臓移植術後免疫抑制薬として承認された。本邦での小児への使用例は少ない。【目的】ドイツで渡航心臓移植後、EVEを継続し10年が経過し成人に至った一例を報告する。【症例】24歳男性。【経過】13歳時に拡張型心筋症を発症。各種抗心不全療法に抵抗性で、発症4カ月で左室補助循環が装着された。4ヶ月の待機後、ドイツ心臓センターで心臓移植術を受けた。心内心電図を用いたテレメトリー(IMEG)で拒絶反応をモニタし、移植1ヵ月で帰国。当初より免疫抑制療法は、PSL、CyA、EVEでありMMFは使用しなかった。IMEGは術後2年まで連日計測し、心筋生検は年1回施行している。PSLは術後3年で終了。以降は目標トラフをCyAを80~100ng/ml、EVEを3~8ng/mlとして二剤での管理を継続。拒絶反応はGrade 0から1で経過し、左冠動脈前下行枝のIVUSでは有意な中内膜の肥厚は認めない。予定外の入院は術後2年目にEBVによる扁桃炎、8年目に細菌性心内膜炎と慢性膿皮症の急性増悪の3回であった。血中EBV-DNAは扁桃炎時19000copyであったが、1年後に50copy程度まで減少、7年目に陰性化した。10年に至る現在まで治療を要する拒絶反応は認めない。心機能は正常で介護職に就業している。【考察】本邦ではEVEは腎機能低下例などにおけるCNI減量目的に途中から導入されることが多い。移植当初からEVEで管理した本例はCyAの血中濃度を低めで管理でき、腎機能低下は軽微で経過している。またEVEは移植後冠動脈病変(CAV)やEBV感染に対して抑制的に働くと言われており本例においてもEBVは扁桃炎のみで消失しCAVの所見もない。創傷治癒機転の抑制や小児期からの長期投与の経験が未知数であることが今後の課題と考えられる。