第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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ポスター

1-11 心不全・心移植

ポスター
心不全④

Sat. Jul 18, 2015 11:20 AM - 11:50 AM ポスター会場 (1F オリオン A+B)

座長:高橋 邦彦 (大阪大学医学部附属病院)

III-P-055~III-P-059

[III-P-059] 単心室症におけるHeart Failure with Preserved Ejection Fractionに対する心臓シャント手術及び心臓内幹細胞自家移植療法の効果

逢坂 大樹1, 石神 修大1, 後藤 拓弥1, 大月 審一2, 笠原 真悟1, 佐野 俊二1, 王 英正3 (1.岡山大学医歯薬学総合研究科 心臓血管外科, 2.岡山大学医歯薬学総合研究科 小児科, 3.岡山大学新医療研究開発センター 再生医療部)

Keywords:HFpEF, 細胞治療, 単心室症

【背景】心不全患者の約半数近くが心収縮率(EF)の保たれた病態 (heart failure with preserved ejection fraction: HFpEF)とされる。HFpEF患者はEFの低下した心不全(HFrEF)と同様に予後不良であるが、その病態は不明で、有効な治療法も確立されていない。【目的】本研究では、小児単心室症患者でのHFpEFの特性と心臓手術ならびに心臓内幹細胞自家移植療法に対する反応性を明らかにする。【対象・方法】2011年以降に当院での臨床研究に登録された小児単心室症の心不全患者(n=43)に対して、術前のcMRIよりEF<40%をHFrEF群(n=30)、EF≧40%をHFpEF群(n=13)とし、その特性及び心臓手術前後、細胞移植前後の心機能変化を比較検討した。【結果】HFrEF群はHFpEF群に比べ有意に心室容量および心筋重量が大きく(EDVI: P=0.02, ESVI: P=0.0003, mass index: P=0.04)、心室ストレインは低値であった(P=0.0004)。cMRIでの造影遅延例はHFrEF群で6例(20%)、HFpEF群は2例(15%)であり、early diastolic strain rate (e’sr)から判定した拡張機能障害はHFrEF群8例(27%)に比べ、HFpEF群では6例(46%)と高い傾向であった。また、シャント術後1か月目では、HFpEF群のみでEFの有意な低下(P=0.02)と心房ストレインの低下がみられた(P=0.02)。さらに、細胞移植を実施しなかった20名の心臓手術後3か月目の評価では、両群ともEFに有意な変化は認めなかったが、術後に細胞治療を行うことでHFrEF群ではEFや心筋弾性能が改善し(EF: P=0.001, Ea/Ees: P=0.0001)、心房収縮率の上昇(P=0.01)やE-wave/e’srの低下(P=0.049)など拡張機能の改善がみられた。しかしながら、HFpEF群ではこれらの指標における有意な変化を認めなかった。【結論】小児HFpEF症例は心臓シャント術後早期に心機能が低下し、かつ、細胞移植に治療抵抗性を示す可能性があり、さらなる病態の解明が望まれる。