[III-P-061] トルバプタンの持つナトリウム利尿作用についての検討
Keywords:トルバプタン, 上皮型Naチャネル, ナトリウム利尿
【はじめに】バソプレシンV2受容体拮抗薬は水利尿作用を示し、浮腫や低Na血症の改善に有用である。以前我々は、小児におけるトルバプタンの有効性と安全性を報告したが、尿中Na濃度が上昇する症例がありトルバプタンのNa利尿の可能性を示唆した。乳児は蓄尿が難しく1日の正確なNa排泄量を把握しにくいが、今回成人で蓄尿によりNa排泄量の増加を確認したので、その機序について考察する。【症例】56歳男性、部分型房室中隔欠損症術後(27歳)、僧帽弁閉鎖不全、三尖弁閉鎖不全、心不全で易疲労感が増悪した。フロセミド、スピロノラクトン、カンデサルタン、ビソプロロール内服中でトルバプタン7.5mg/日を追加した。尿浸透圧は417mOsm/Lから6時間後には191に低下したが、1日尿量と体重に変化なかった為、15mg/日に増量したところ尿量は1500ccから4200ccに増加し体重も2kg減少し自覚症状も改善した。CTRは67%から62%に低下した。増量後、尿浸透圧は380から6時間後には200に低下し、尿中Na濃度は54 mEq/Lから61 mEq/Lに上昇し、1日尿中Na排泄量も57mEqから265mEqに上昇した。FENaは0.17%から1.7%に上昇した。1日K排泄量も24mEqから68mEqに上昇した。血清Naは140 mEq/L→141、血清Kは4.1→4.7であった。投与前後で血漿AVP濃度は3pg/mL→2.6と変わらなかったが、尿中AVP濃度は39から8.6に低下した。【まとめ】体重が減少するような確実な効果が見られた投与量では、1日尿中Na排泄量は増加したと言わざるを得ない。その機序として、トルバプタンによりうっ血が軽減する結果、腎血流、圧利尿機序、ループ利尿薬抵抗性が改善した可能性がある。1日K排泄量の増加はこれを支持する。もう一つの可能性は、V2受容体依存性の上皮型Naチャネル(ENaC)によるNa再吸収の阻害である。尿中AVP濃度の低下の機序は不明だが、尿細管腔にあるV1a受容体を介したRAA系抑制やV2作用抑制も関与している可能性もあり、さらなる検討が必要である。