[III-P-064] 術後遠隔期に乳歯の動揺が原因と思われる脳膿瘍を生じた三尖弁閉鎖のフォンタン術後の1例ー乳歯の動揺に抗生剤の予防投薬は必要かー
Keywords:フォンタン術後, 脳膿瘍, 感染性心内膜炎
【症例】10歳男児。 【現病歴】2歳時に三尖弁閉鎖に対してExtracardiac TCPCを施行された男児。2014年12月2日に嘔吐1回を認め、近医(一般内科の開業医)受診し、胃腸炎と診断され、整腸剤や制吐剤を処方され経過観察となっていたが、その後も1日に1~2回程度の嘔吐が持続。12月5日夜から発熱し、12月6日当院救急外来初診。診察時、意識は清明であるが、診察室でも嘔吐を認め、経口摂取不良もあり、輸液と血液検査を施行した。炎症反応は陰性であったが、輸液終了前にも嘔吐したため、頭部CT検査を行ったところ、左後頭葉に広範囲な膿瘍形成が疑われ、術後のフォローを受けていた病院に搬送。【経過】転院後、緊急頭部MRI検査を施行し、脳膿瘍の脳室内進展と診断。腰椎穿刺で膿の排泄を認めた。入院後VCM投与を開始し、入院5日目に膿瘍穿刺排膿術(ドレナージ術)を施行。入院後の経胸壁心エコー検査では、疣贅ははっきりせず。脳室ドレナージ術施行時に行った経食道エコーで僧帽弁の一部に疣贅と思われる所見を認めた。後日腰椎穿刺で得られた膿から口腔内の常在菌であるStreptococcus intermediusが検出された。起炎菌判明後は、PCGの静注に変更した。現在四肢麻痺などの著明な神経学的後遺症はなく経過している。【まとめ】今回の発症前に歯科治療歴はなかったが、約2週間前から乳歯の動揺が持続していた。抜歯などの歯科治療ではなく、乳歯の動揺であったため、保護者も抗生剤内服はさせていなかった。後日検出された起炎菌は、口腔内常在菌であったことから、脳膿瘍の原因となったのは、乳歯の動揺が原因であると考えられた。今後感染性心内膜炎の発症予防のためには、抜歯などの歯科治療時だけではなく、乳歯の動揺が続く際にも抗生剤の予防投与が必要ではないかと思われた。