[III-P-068] 感染性心内膜炎治療中に偽胆石を疑われ、対処に難渋した僧房弁人工弁置換術後の1例
Keywords:感染性心内膜炎, 偽胆石, セフトリアキソン
【背景】セフトリアキソン(CTRX)による偽胆石は副作用報告されているが、通常自然治癒が多いとされ、髄膜炎など大量投与の際に多いと言われている。【症例】4歳男児【経過】生後6ヶ月で重症僧帽弁逆流の診断。9ヶ月 僧帽弁形成手術、1歳3ヶ月で生体弁置換手術を受ける。弁置換後2年4ヶ月頃から人工弁機能低下による逆流が目立つようになっていた。弁置換後2年8ヶ月に発熱しAMPC内服で一旦解熱したが、以降も発熱解熱を繰り返す。10病日の採血でWBC 5,130/μl、CRP 3.4mg/dlながらプロカルシトニン 8.46ng/mlと高く、心内膜炎を疑いVCM+GMで治療開始。後日血液培養にてHaemophilis aphrophilusを検出し、19病日にガイドラインに沿って抗菌剤をCTRX+GMへ変更、6週間の抗菌剤投与後に再弁置換予定とした。38病日から時々下痢、腹痛を訴えたが、症状はっきりせず、整腸剤内服で様子観察されていた。47病日に間歇的に転げ回る腹痛出現。腹部エコーにて胆嚢壁肥厚や緊満など急性胆嚢炎の所見には乏しいものの胆石を認めた。肝機能異常なかったがCTRX中止、ABPCへ変更。しかし疝痛発作繰り返し、60病日にAST 165, ALT 228と上昇、総胆管結石嵌頓を疑われERCPが予定されたが、MRCPで胆管内結石認めず様子観察となった。対処治療で自然治癒を期待したが、その後敗血症性ショックとなり集中治療が必要となった。状態の改善を待って84病日に腹腔鏡下胆嚢摘出手術を実施した。ただし摘出された胆嚢には炎症所見なく、胆石も認めなかった。105病日、無事人工弁再置換手術が行われた。【考察】腹部エコーのタイミングが遅れたことは反省すべきであった。CTRX長期投与例では中止後に偽胆石を起こす例も報告されており、CTRX投与においては、偽胆石を念頭に置き、定期的な腹部エコーが必要である。