[III-P-069] 低用量アスピリンによる多発性小腸潰瘍で出血性ショックを呈したAllagile症候群の1例
Keywords:低用量アスピリン, 小腸潰瘍, 出血性ショック
【背景】低用量アスピリンはBTシャント術後のシャント閉塞予防のために一般的に使用されている。内科領域では、低用量アスピリン長期投与による小腸粘膜障害例の報告もあり、小腸潰瘍形成による多量の下血、原因不明の貧血や膜様狭窄による通過障害などが典型的な症状とされる。【症例】3歳女児、生後2か月時にショック状態で当院へ救急搬送され、心室中隔欠損症、肺動脈閉鎖、主肺動脈および末梢肺動脈低形成、動脈管閉鎖の診断で緊急でセントラルシャントを施行し、低用量アスピリン内服を開始した。低酸素血症の進行に対して生後10か月時に右BTシャントを追加し、胆汁うっ滞、椎体異常、特異顔貌の合併から臨床的にAllagile症候群と診断した。3歳1か月時に遷延する発熱で入院精査を行ったが原因は不明で、抗生剤投与に反応性の乏しい周期的な高熱が遷延した。経過中に時折激しい腹痛とタール便を認めるようになり、鮮血便も出現した。上下部消化管内視鏡検査やMeckelシンチでは出血の原因となりうる病変は特定されず、消化管出血シンチで上部小腸に淡い集積を認めたが、出血源としての断定は困難であった。その後、大量血便から出血性ショックになり、一時的に人工呼吸管理下での集中管理を要した。状態安定後に試験開腹下で行った術中小腸内視鏡検査で多発性小腸潰瘍を認め出血源と考えられた。小腸の病理所見では好中球主体の炎症細胞浸潤を伴い、粘膜下層における平滑筋束および血管の異常蓄積を認め、NSAIDs関連小腸潰瘍が最も疑われたため低用量アスピリンを中止した。活動性の出血がないのを確認しヘパリン持続静注を計10日間行った。低用量アスピリン中止後は腹痛や血便の再燃なく経過している。【結論】低用量アスピリンの長期投与例では、小腸粘膜障害に伴う消化器症状の出現にも注意して経過観察が必要である。