[III-P-075] Fontan術後神経発達と治療歴、血行動態、脳循環の関係
Keywords:神経発達, Fontan術後, 脳循環
【背景】 重症心疾患患児は、高次機能の発達に重要な時期に低酸素、血行動態の不安定性に曝されながら、検査および手術を繰り返し受けなければならない。特にFontan手術症例では、運動発達、言語発達の遅れに加え、学習障害、注意欠陥、多動性障害といった高次機能障害が40-50%に認めると報告されている。Fontan術後の発達を評価し、発達状況に影響を及ぼす因子を明らかにすることは神経学的予後改善に繋がる可能性がある。【方法と結果】 当大学で開窓Fontanを施行された学童期の児を対象に発達検査(WISC3)を施行し、その結果と治療歴およびFontan循環の血行動態とを比較した。症例は、三尖弁閉鎖4例、左心低形成1例、単心室3例、両大血管右室起始3例、肺動脈閉鎖2例。検査時の年齢の中央値は、7.63歳(5.2-14.1歳)。全検査IQの平均は84.7±18.1、言語性IQが90.1±16.8、動作性IQが82.4±17.3と言語性IQの方が高かった(P=0.02)。さらに言語性IQは、多変量解析で新生時期の手術既往、Glenn施行時期、Fontan施行時期、現在のSaO2と有意な相関を認め、Glenn施行時期およびFontan施行時期が早いほどIQが高かった(P=0.04, R2=0.72)。 IQと現在の血行動態とは相関を認めなかったが、脳の血流受給バランスOBI(SaO2-SVC/SaO2-IVC)は心拍出量と負の相関を認め(P<0.01)、術後血行動態が脳循環に影響を及ぼしていることが示唆された。【考察】 新生時期の手術の回避と低酸素血症の早期改善がFontan患者の神経発達の改善に繋がる可能性が考えられた。また、Fontan術後の低心拍出状態は脳の酸素需給unbalanceに関与し、神経発達に相加・相乗的に影響を及ぼしている可能性があり、脳循環を加味した慢性期管理の重要性を示唆した。