第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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ポスター

1-13 術後遠隔期・合併症・発達

ポスター
フォンタン循環(低心拍出)

Sat. Jul 18, 2015 11:26 AM - 11:56 AM ポスター会場 (1F オリオン A+B)

座長:鷄内 伸二 (兵庫県立尼崎病院)

III-P-076~III-P-080

[III-P-079] スピロノラクトンの追加投与が奏功した蛋白漏出性胃腸症の一例

田代 克弥1, 飯田 千晶1, 牛ノ濱 大也2 (1.佐賀大学医学部 小児科学, 2.福岡市立こども病院 循環器科)

Keywords:蛋白漏出性胃腸症, Fontan手術, スピロノラクトン

蛋白漏出性胃腸症(以下PLE)はFontan手術後合併症の一つであり、その約4-10%程度でみられるとされている。しかもその予後は決して良好ではなく、発症からの5年生存率は50%程度ともいわれている。治療方法についてはヘパリン投与をはじめ各種治療法が提唱され、近年はPDE5阻害剤や抗利尿ホルモン受容体拮抗薬の有効性も報告されているが、その優劣については未だ定まったものはない。症例は3歳男児。単心室+大動脈縮窄に対してFontan手術(TCPC)を施行された。術後6ヵ月後に腹痛・嘔吐を主訴に当院を受診し、その際に軽度の眼瞼浮腫と血清総蛋白 4.3g/dL、アルブミン2.5g/dL、IgG 182mg/dLと何れも以前よりも著しい低下を認めた。その時点で尿蛋白陰性であり、患者の既往歴からPLEと診断した。患者はTCPC術後管理の為、タダラフィル12mgと抗アルドステロン作用を有するトラセミド 7mgを既に内服中であった。このため、IgGの補充を行うと共に追加治療として トルバプタンの投与を行った。しかし、その効果は限定的で低蛋白血症の悪化を抑止はしたものの、改善正常化には至らなかった。このため、定期的にIgG製剤の補充を行いつつ経過観察したが改善に至らなかったため、発症3か月後にトラセミドに加えてスピロノラクトン20mg(1.5mg/kg/日)を追加した。投与翌日より眼瞼浮腫は消失し投与2週後には血液検査値正常化し現在までその状態維持している。本例ではPDE5阻害剤シルデナフィルや抗アルドステロン作用を持つトラセミドも内服中での発症であった。この状況でのトルバプタンの効果は限定的であった。一方スピロノラクトン投与の効果は速やかかつ強力あり、本例では他の治療薬に比べてより有効であるあることが明らかになった。今後のPLE治療を考えるうえで興味深い症例と思われたので報告する。