[III-P-088] 大動脈弓再建術後大動脈における血管径と圧較差の関係
Keywords:re-coactation, 圧反射, augmentation pressure
【目的】大動脈弓再建術後の再狭窄では,形態的狭窄に比して圧較差が大きい症例を経験することがある。本研究は大動脈弓再建術後症例における血管径と圧較差の関係を,血行動態の観点から明らかにすることを目的とする。【方法】対象は1990年4月から2014年1月に大動脈弓再建術を行った,大動脈縮窄症及び,大動脈弓離断症術後の患者55例(年齢5.5±5.2歳)。心臓カテーテル検査により,狭窄部前後での収縮期圧,拡張期圧,平均圧,脈圧を測定した。狭窄部径を心室造影の側面像で計測し,圧データとの相関を検討した。【結果】収縮期圧較差20mmHg以上の6例(21~57mmHg)は20mmHg未満の症例と比べ,年齢,体表面積,体血流量に差はなかった。前者では上行大動脈の脈圧が有意に高かった(58.0±14.1mmHg vs 36.0±8.8mmHg,p<0.001)が,収縮期圧,拡張期圧,平均圧に差は認めなかった。最小2乗法による回帰分析を行うと,収縮期圧較差は狭窄部径を体表面積の平方根で除した値とよい相関を示した(R2=0.80)。外れ値と考えられる3例では,いずれも狭窄部径に比して圧較差が大きかったが,狭窄を形成している吻合部がisthmusより近位に位置し,上行大動脈の脈圧は高値(59~90mmHg)であった。【考察】大動脈弓再建術後症例では吻合部からの圧反射によりaugmentation pressure(AP)が形成されることが知られている。圧較差が高度になるとAPが強く影響し,上行大動脈の脈圧が増大し,収縮期圧較差の増大を来すと考えられる。isthmusより近位に狭窄が存在すると形態的狭窄に比して圧較差が大きくなることがあるが,これは(1)通過血流が増えることにより圧較差が増大,(2)圧反射の起点がより近位になることで脈圧が増大し,収縮期圧較差が増大,の2つの機序が示唆された。