[III-P-092] 60歳以上の高齢患者に対する心房中隔欠損閉鎖術の遠隔期成績
Keywords:ASD, 成人, 心房細動
【目的】心房中隔欠損症未治療の高齢者は心房性不整脈や三尖弁逆流を高率に合併しており、外科的閉鎖に対するその治療効果は明らかでない。【方法】1990年以降に行った心房中隔欠損閉鎖術のうち、手術時年齢60歳以上かつ、当院にて外来フォロー可能であった患者18人を対象に患者診療録を後方視的に検討した。検討項目は1)周術期における弁逆流・心房性不整脈、NYHAの評価、2)累積生存率、3)再治療介入回避率、4)出血・梗塞性合併症回避率。【結果】男女比6:12、平均手術時年齢 65.2 ± 3.1 才 (60.8 - 70.7)、平均観察期間は7.6 ± 5.2 年 (1ヶ月 - 15.7年)。術前の平均肺動脈圧は22.0 ± 5.5 mmHg (14 - 37)、肺体血流比 3.0 ± 0.9 (1.8 - 4.3)。同時手術は三尖弁輪形成術 (12例 66.7 %)、僧帽弁輪形成術 (3例 16.7 %)、右側Maze手術 (9例 50 %)、Maze手術 (3例 16.7 %)。術前の心房細動は14例 (78%)に認め、そのうち11例において不整脈手術を施行し6例が洞調律に復帰した。術前後で三尖弁逆流は有意に減少(1.8 ± 1.2 vs 0.6 ± 0.9、P = 0.002)し、僧帽弁逆流に有意差は認めなかった(1.4 ± 1.3 vs 0.8 ± 1.0、P = 0.12)。術後、NYHAの有意な改善を認めた(2.4 ± 0.5 vs 1.1 ± 0.1 P < 0.0001)。遠隔死亡は1例(脳幹梗塞)で15年の累積生存率は66.7 %、再治療介入は3例(術後洞不全症候群に対するペースメーカー移植術2例、僧房弁置換術・三尖弁輪形成術1例)で、再治療介入回避率は15年で65.7 %であった。出血・梗塞性合併症は3例(硬膜下血腫2例、脳幹梗塞1例)で、全例ワーファリン内服中であった。出血・梗塞性合併症回避率は14年で61.1 %であった。【結論】心房中隔欠損閉鎖に加え弁輪形成、不整脈手術を併施することで長期の罹患期間を有する心房中隔欠損症患者に対してもADLを改善し得た。また、遠隔期の出血・梗塞性合併症回避のためには積極的に不整脈手術を併施することが必要であると考えられた。