[III-P-105] 著明な脾腫が門脈性肺高血圧症の増悪因子と考えられた症例を通して~脾摘は門脈性肺高血圧の治療となり得るか?~
Keywords:門脈性肺高血圧症, 脾腫, 脾摘
【はじめに】門脈性肺高血圧症(PoPH)の成因に関して、高拍出によるshear stressや門脈体循環シャントによるmediatorの関与などいくつかの要因が挙げられているが、脾腫サイズの影響を指摘した報告はない。【症例】4歳女児。1ヶ月時汎血球減少と黄疸を、4ヶ月時脾腫を指摘。9ヶ月時肝門部門脈閉塞症と診断。1歳以降食道静脈瘤に対する加療を反復。4歳時にPHが疑われ紹介入院。カテーテル検査にてmPAP 43mmHg,Pp/Ps 0.75,CI 4.4L/min./m2 ,Rp 7.5U/m2 、その他検査からPoPHと診断。肝移植を視野にPH治療を先行する方針で酸素投与とAmbrisentanを開始、Tadarafilを追加した。しかし内服開始後に心拡大、肺鬱血、PH増悪を認め増量を断念、利尿薬を追加した。脾腫の増悪に伴う容量負荷と胸郭圧迫がPHの増悪因子である可能性を考え脾摘術を施行。術後1ヶ月時には mPAP 21mmHg,Pp/Ps 0.38,CI 5.4L/min./m2 ,Rp 1.6U/m2 とPHは改善した。以降10ヶ月間再増悪なく経過している。【症例を通しての検討】本症例では脾摘によりPHが改善した。巨脾がPHの増悪因子であった可能性を考え、脾臓サイズとPoPHの関連を検討する目的で、PHを伴わない同年代の門脈圧亢進症例と脾臓サイズを比較した。対象:本症例と門脈圧亢進症を伴う肝移植前の5例(2-6歳:N群)。方法:腹部造影CTよりiNtuition Clientを用いて脾臓容積を計測。結果:N群の脾臓容積(ml/m2 )は395-899 (平均599)であったのに対し本症例は967とより著明な脾腫であった。【考察】著明な脾腫がPoPhの成因・増悪因子である可能性が示唆された。【結論】脾摘術はPoPHの有効な治療戦略の一つと考えられるが、適応に関しては慎重な検討が求められる。