第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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1-18 川崎病・冠動脈・血管

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川崎病・冠動脈・血管⑦

Sat. Jul 18, 2015 10:50 AM - 11:20 AM ポスター会場 (1F オリオン A+B)

座長:南 孝臣 (自治医科大学とちぎ子ども医療センター)

III-P-112~III-P-116

[III-P-112] 左冠動脈肺動脈起始症における術後中長期の心機能について~発症時期による比較検討~

狩野 実希, 富松 宏文, 竹内 大二, 清水 美妃子, 石井 徹子, 豊原 啓子, 稲井 慶, 篠原 徳子, 杉山 央, 中西 敏雄 (東京女子医科大学病院 循環器小児科)

Keywords:ALCAPA, 心筋虚血, 冠血行再建術

【背景】左冠動脈肺動脈起始症(ALCAPA)は発症時期により臨床像は大きく異なることが知られている。しかし、発症時期による冠血行再建術後の経過について比較検討した報告は少ない。【目的】発症時期による術後心機能の差を明らかにすること。【対象】当院で冠血行再建術を施行した38人中、周術期死亡2人を除き、3年以上経過観察可能であった29人(男9人、女22人)。【方法】診療録から後方視的に検討した。心不全症状の出現時期が生後1年未満の症例を乳児期発症群(A群)、1年以降の症例を非乳児期発症群(B群)とし、以下の項目について比較検討した。有意差p<0.05(*付記)。術前;左室壁運動低下の有無(Asynergy)、左室駆出率(LVEF)、中等度以上の僧帽弁逆流の有無(Mr)、心胸郭比(CTR)。術後;上記4項目、心筋シンチの潅流欠損所見の有無(Defect)、BNP、NYHA。【結果】A群12人、B群17人。手術時期はA群0.65±0.14歳:B群13±2.5歳(以下A群:B群)。術式は両群とも冠動脈移植術またはTakeuchi法±僧帽弁形成術。術後観察期間の中央値は18.1年(4.8-31.7年)。死亡はB群2人、再手術例は7人(3人:4人)。術前;Asynergy 88%:50%、LVEF 41±14%:58±11%*、Mr 36%:38%、CTR 64±4.6%:58±7.6%*術後;Asynergy 0%:35%*、LVEF 64±3.0%:58±11%、Mr 0%:12%、CTR 48±3.5%:53±8.3%、Defect 82%:94%、BNP 70±65%:106±158%、NYHA 1.1±0.3%:1.2±0.6%【考察】A群はB群と比較して術前の左室機能は有意に低下していたが、術後の左室機能は両群ともに正常範囲内で有意差を認めず、むしろB群で低い傾向であった。A群では心筋予備能が高く、血行再建後の心機能改善が得られやすいと考えられた。一方、Defectは両群とも高率に認められた。ALCAPAではglobalな心収縮能が保たれていても心筋障害は残存すると考えられた。【結論】耐術能のあるALCAPA患者では、術後心機能は良好に維持されており発症時期による有意差は認めなかった。