[III-P-130] 右室への転移性肝芽腫に対する摘出術の経験
Keywords:転移性肝芽腫, 右室転移, 三尖弁形成
【背景】肝芽腫は転移巣を含め完全に切除できれば予後は比較的良好とされている。肺や腹膜への転移巣に対する外科治療は行われているが、心臓への腫瘍転移に対する手術例の報告は極めて稀である。我々は、右室の肝芽腫転移巣に対し、腫瘍摘出、三尖弁形成術をおこなったので報告する。【症例】2歳6か月、男児。1歳10か月時に肝芽腫と診断され、CT検査で両側肺および右室に転移を認めた。拡大肝右葉切除術にて主病巣を摘出したのち、化学療法を行って肺と右室の転移巣を縮小させ、まず左右の肺部分切除術を行い肺の転移巣を切除した。今回、残る右室の転移巣に対し外科治療を試みた。腫瘍は径15mmあり、右房、右冠動脈に近い右室自由壁内層に広範囲に存在した。切除が広範囲となり右室機能を低下させた場合には、one and a half repair、あるいはRV exclusionをともなうフォンタン手術を考慮した。【手術】術前にインシアニングリーン(ICG)を静脈内注射し、術中に赤外線観察カメラ(PDE)を使用して腫瘍を識別した。人工心肺下に心停止として、PDEにて蛍光を発する腫瘍の範囲を確認しながら腫瘍を切除した。腫瘍は、右室自由壁内層にあり三尖弁前尖とその腱索を巻き込んでいた。前尖の中隔尖寄り約1/3とともに腫瘍を合併切除した。三尖弁の再建は自己心膜を用いてcusp extensionを行い3本の人工腱索を立てた。術後経過は良好で術後6日目に退院した。三尖弁閉鎖不全は軽度から中等度あるが胸写ではCTRは46%で臨床的には安定している。【考察】腫瘍の心臓転移巣に対する手術は稀だが、その要点は腫瘍の完全切除と欠損部の再建方法にある。腫瘍の浸潤範囲によっては右室機能を低下させる結果、one and a half あるいはRV exclusionをともなうuniventricular repairが必要となる場合があり得る。われわれの症例では、三尖弁形成術によって右室機能を温存でき幸い良好な臨床経過をたどった。