[III-P-145] 動脈管閉鎖に起因する血行動態変化の予測について
Keywords:動脈管, 先天性心疾患, プロスタグランジン
【背景】動脈管依存性の先天性心疾患は根治術または姑息術までの間、プロスタグランジンE1(PGE1)の持続点滴が必須である。【目的】PGE1を意図的に中止し、動脈管閉鎖後の血行動態の変化を確認した症例について後方視的に検討すること。2005年1月~2015年1月までの59症例を、動脈管が体肺循環のmixingに必要なA群(23例)、体循環に必要なB群(11例)、肺循環に必要なC群(25例)に分類し検討した。【結果】A群の内訳はTGA18例、DORV5例であった。平均投与期間は5.5±3.8日。心房間狭小化のためBASを施行した症例は15例で、11例はBAS施行後に投与中止可能であった。PGE1再開の理由はmixingの不良による酸素化低下が主なものであった。BASを施行しなかった8例中、5例は投与を中止できた。Mixingの不良によるSpO2低下を指標に投与を再開した6例について、低酸素血症の進行による緊急手術を要した症例は認めなかった。B群の内訳はCoA complex7例、MA,DORV,CoA1例、MS, AS,CoA1例、simpleCoA1例、心筋炎1例であった。平均投与期間は5.1±3.5日。9例は投与中止可能で、大動脈の修復術は8例に行われたが、3例では外科的介入が不要であった。2例では大動脈の順行性血流を増やすため投与を再開し、後日CoA repairを施行した。C群の内訳としてPA/IVS4例、PA/VSD8例(うちMAPCA6例)、DORV/PA2例、cTGA/PA2例、SRV/PA2例、MA,DORV,PA1例、TOF2例、Ebstein2、TA2例であった。平均投与期間は18.3±35.9日。肺血流減少による低酸素血症の進行を指標に投与を再開した10例では、全例BTS施行後に動脈管結紮は必要とせず、術後に自然閉鎖した。いずれの群においても投与再開に伴う頭蓋内出血等の有害事象は認めなかった。【考察】動脈管依存性が疑われる先天性心疾患において、LipoPGE1を意図的に中止するチャレンジテストは有害事象を来たさず可能であり、手術実施施設においては指摘手術方針の決定および介入時期の評価の目安として有用である。