第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

Presentation information

ポスター

1-09 集中治療・周術期管理

ポスター
周術期:術前管理

Sat. Jul 18, 2015 11:14 AM - 11:44 AM ポスター会場 (1F オリオン A+B)

座長:脇 研自 (倉敷中央病院)

III-P-144~III-P-148

[III-P-146] 最近の総肺静脈還流異常症(TAPVC)の診断過程の検討

富田 陽一1, 林 真理子1, 遠藤 起生1, 青柳 良倫1, 桃井 伸緒1, 若松 大樹2 (1.福島県立医科大学医学部 小児科, 2.福島県立医科大学医学部 心臓血管外科)

Keywords:総肺静脈還流異常, チアノーゼ, 心臓超音波検査

【背景】総肺静脈還流異常(TAPVC)は、出生後速やかに診断され、不必要な酸素投与や人工呼吸管理を行われずに専門病院に搬送されることが望ましい疾患である。しかし、診断まで時間を要し、不必要な治療が施される症例も存在する。【目的】TAPVC症例の診断過程を検討し、問題点を明らかにすること。【方法】過去6年間に当院へ根治手術目的に搬送されたTAPVC12例の診断過程を、診療録から後方視的に検討した。他の心奇形合併症例は除外した。【結果】全例で胎児診断はなされていなかった。1例は在胎30週、出生体重1372gの早産児であったが、他は正期産児で、出生時仮死は認めなかった。1型が6例、2型、3型、4型がそれぞれ2例ずつであった。12例中2例は正常児として産科を退院し、日齢47と6ヵ月時に、それぞれ哺乳不良、心雑音を契機に診断された。残りの10例は生後早期よりチアノーゼを認め、うち5例は多呼吸、呻吟、陥没呼吸などの呼吸器症状を合併した。10例全てに酸素投与が行われ、7例で動脈血酸素飽和度の上昇を認めた。この7例の確定診断に要した日数は1から9日(平均3.3日)で、酸素投与に反応がなかった3例の0から1日(平均0.33日)に比べて長く、酸素に反応する症例は呼吸器疾患として治療が継続される傾向を認めた。10例で当院搬送前に小児循環器医師以外による心臓超音波検査がなされた。このうち初回の超音波検査で本疾患が疑われたのは3例で、残りの7例では遷延性肺高血圧症、心房中隔欠損症、一過性多呼吸等の診断がなされ、その疾患に対する治療が行われた。【考察】心エコー機器の普及は著しいが、依然、小児循環器医師以外による診断率は低く、呼吸器疾患として酸素投与が行われ、酸素に反応する症例では更に診断が遅延することが明らかになった。診断が遅れた過程や誤診された心疾患を明らかにし、初期診断にあたる小児科医師に提示することは、診断力向上に有用であると考えられる。