[III-P-147] 心膜切開後症候群におけるアスピリンの有用性の検討
Keywords:心房中隔欠損症, 心膜切開後症候群, アスピリン
【背景】心房中隔欠損症(ASD)の術後に心膜切開後症候群(PPS)を認めることがあり、アスピリン、ステロイドの有用性が報告されている。【目的】ASD術後のアスピリン内服による、PPSにおける心タンポナーデの発症の予防効果を検討すること。【対象】2008年から2014年に当院でASDの手術目的で入院した連続65人、そのうち心不全患者、肺高血圧症患者は除いた。【方法】診療記録の後方視的検討。当院では2012年よりASDの術後に全例予防的アスピリンを投与する方針としている。また、PPSによる心嚢水の貯留に対しては、まず利尿剤の増量を行い、利尿剤の効果が不十分で、かつタンポナーデが懸念される場合ステロイドを使用し、タンポナーデに対しドレナージを行っている。以上より、アスピリンの予防内服を行った2012年以降の群(+)と、2011年以前の行わなかった群(-)に分類した。2群間でPPSの心嚢水貯留に対し、ステロイド治療、ドレナージを行った頻度をχ二乗検定で、ドレーン留置期間と退院時の利尿剤の量をt検定で検討した。p<0.02を有意差ありとした。【結果】予防内服(+)群は23人、予防内服(-)群は42人であった。予防内服(-)群では、42人中8人に2~3mmの心嚢水貯留が認められたため、アスピリンが投与された。予防内服(+)群では、ステロイドの使用2人、ドレナージ0人、ドレーン留置期間3.4±0.6日であり、退院時ラシックス量1.3±0.6mg/kgであった。一方予防内服(-)群はステロイドの使用1人、ドレナージ0人、ドレーン留置期間3.2±1.5日であり、退院時ラシックス量1.4±0.7mg/kgであった。ステロイド使用、ドレナージ、ドレーン留置期間、退院時ラシックス量いずれも有意差を認めなかった。副作用は、予防内服(+)群の1人に薬剤性皮疹と肝機能上昇を認めた。【結語】ASD術後のアスピリン内服による、PPSにおける心タンポナーデの発症の予防効果は認められなかった。