[III-P-154] ECMOが有用であったtachycardia induced cardiomyopathy3例の経験
Keywords:TIC, ECMO, central ECMO
【背景】Tachycardia induced cardiomyopathy(TIC)では持続的な頻脈により心機能が低下するが、頻脈治療により改善する可逆的な心筋症とされている。しかし、高度に心機能が低下した症例では治療に難渋することがある。我々は高度に心機能低下したTICに対してECMO導入し、良好な結果を得たので報告する。【症例】過去10年間で当科での小児ECMO 92症例中、TICのため導入した症例は3例であり、peripheral ECMO2例、Central ECMO1例であった。症例1: 3ヶ月男児、症例2: 2歳10ヶ月女児(VSD, PAB術後)来院時は200 bpmを超える上室性頻拍であり、症例1, 2のUCGでは各々LVEF: 17, 12%, LVEDd: 105, 109% of normal、また BNP: 473.2, 4525 pg/mLであった。頚部血管からのperipheral ECMO導入後、抗不整脈薬で頻拍治療を行い、ともに心機能の改善を認めた。導入後225, 202時間で離脱した。1ヶ月後のLVEF: 78.9, 71.7%, LVEDd: 107, 86% of normal, BNP: 22.5, 109.6 pg/mLであった。いずれの症例もECMO導入による合併症なく経過し、退院。その後、症例2は根治術に到達した。症例3: 12歳男児来院時170bpmの上室性頻拍であり、心機能はLVEF: 20%, LVEDd: 151% of normal, BNP: 908.4 pg/mLであった。左心系の拡大および肺鬱血を認めたため、胸骨正中切開による左心脱血を加えたcentral ECMOを導入した。心電図から左心耳起源の上室性頻拍と判断し、4日目に左心耳切除を施行した。直後より上室性頻拍は治まり、心機能の改善を認めた。導入中、肺出血を合併したが徐々に改善した。導入後165時間で離脱した。1ヶ月後の心機能はLVEF: 60%, LVEDd: 99% of normal, BNP 27.1 pg/mLであり、自宅退院となった。【まとめ】高度に心機能低下したTIC症例に対し、ECMOを導入することで心機能の不可逆的な低下を招くことなく、心機能の改善を得ることができた。特に、左心不全の強い症例にはcentral ECMOが有用であると考えられた。