[III-S16-02] 一人の女性小児心臓血管外科医として
コメンテーター:山岸正明 (京都府立医科大学小児医療センター 小児心臓血管外科)
Keywords:女医, 小児心臓血管外科, キャリア
近年、女性のキャリア支援については様々な議論がなされている。医療分野では2015年の医師国家試験合格者のうち女性の占める割合は 31.5%で、2000年以降30%台前半で推移している。一方で、女性医師の生涯離職率が73%にのぼり、離職の86%は最初の10年に起こり,妊娠・出産,育児との両立の困難が原因であるという報告もある。今回、自身の経験をもとに小児心臓血管外科医としての女性の立つ位置を検討したい。私は医学部を卒業後、母校の外科学教室に入局。2年の外科研修医、3年の一般外科修練医を経て外科認定医を習得後、心臓血管外科学教室に入局。5ヶ月の成人班での研修の後、小児班の一員となった。その後、2年間福岡市立こども病院で研鑽を積み、卒後12年目で外科専門医と学位を習得、13年目で心臓血管外科専門医を習得した。しかしながら卒後14年目に結婚を機に離職、2年9ヶ月の休職期間を経て復職。卒後18年目に出産、2ヶ月の産休の後に復帰。現在は1歳の幼児を抱え、約1時間の出勤時間繰り下げと当直免除頂いているが、時間外呼び出しには対応している。小児循環器領域での幅広い患者層と多種多様な病態に対応するには女性特有の繊細さとその半面にある大胆さが適していることもあろう。しかしながら女医が継続してキャリアアップを行うには妊娠・出産,育児により自分の都合だけで動けないことがネックとなってくる。よって、自分で何もかも背負わずに頼れるところは頼ることが必要である。ただ、若手医師が周囲に頼るのは困難なこともあろうかと思われる。女医の妊娠・出産,育児の至適時期には様々な意見があるだろうし、自身もまだまだキャリアアップの時期ではあるが、医師免許習得後数年はがむしゃらに仕事に邁進し、専門医や学位習得といったある程度のキャリアを積んだ後にプライベートを考えるのも一つの道かと思う。最後にキャリアアップに勤しめる我が身を思い、周囲のご協力に謝意を表したい。