第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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シンポジウム

シンポジウム16
小児循環器領域と女性医師

Sat. Jul 18, 2015 10:05 AM - 12:05 PM 第1会場 (1F ペガサス A)

座長:
市田 蕗子 (富山大学)
角 秀秋 (福岡市立こども病院)

III-S16-01~III-S16-12

[III-S16-06] 出産後も心臓血管外科研修を継続するための要件とは何か ~育児中に学位取得、心臓血管外科研修をして考えたこと~

小林 純子1, 樽井 俊1, 藤井 泰宏1, 小谷 恭弘1, 川畑 拓也1, 黒子 洋介1, 吉積 功1, 新井 禎彦1, 笠原 真悟1, 王 英正2, 佐野 俊二1 (1.岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 心臓血管外科, 2.岡山大学病院新医療研究開発センター 再生医療部)

Keywords:女性医師, 出産育児, 心臓血管外科研修

【背景と目的】出産・育児を契機に退職する女性医師は未だ多く、勤務継続の最大の障壁とされている。出産後に学位を取得し心臓血管外科研修を継続している自身の経緯と各種調査結果を検討し、育児をしつつ心臓血管外科研修を継続するのに必要な要件を検討した。【結果】私は大学院在学中に出産後、疾患特異的iPS細胞の研究を開始した。3年半後に論文が受理され、大学院卒業後は臨床フェローとして勤務している。学会発表は国内外で行った。自身の活動上最も支障となるのは、勤務可能時間の制限であった。8時から18時の通常保育時間内での勤務には研究室・職場の理解が不可欠で、定時帰宅や子供の発熱時等の早退を認めていただいたことで勤務継続が可能となった。臨床業務では複数担当医制により重症患者や急変による負担増加がなく、勤務継続に有効であった。また家族の協力により、時間的制約のない日を作り仕事を徹底的に行った。これにより長時間の研究・手術など対応できる業務が大幅に拡大した。ただ、それでも成果を出すには不十分であり、解析や翌日の準備・学習等の座業はすべて夜間に自宅で行った。【考察】育児をしながら勤務継続するには、職場と家族の理解が不可欠である。日本循環器学会の調査結果では、育児中の女性医師に上司・同僚の理解があると回答した女性会員は30%程度であり、改善が望まれる。しかし日本外科学会の調査結果で、キャリア形成障害の要因として労働条件の悪さを女性は36%(2位)、男性では42%(1位)が回答し、必要な支援として緊急時の代替要員の確保や職場の意識改革を挙げているように、男女を問わず時間的制約の中で過酷な勤務をしている現状があり、ワークシェアリングや時間の効率的使用といった労働環境全体の改善が育児中の女性医師への理解や勤務継続には必要であると考えられる。そのような育児中の女性医師に優しい環境は全ての医師にとっても働きやすい環境であるはずである。