第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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シンポジウム

シンポジウム18(日本小児循環器学会 心筋生検研究会ジョイントセッション)
心筋炎診療の新展開 

Sat. Jul 18, 2015 10:30 AM - 12:00 PM 第2会場 (1F ペガサス B)

座長:
今中 (吉田) 恭子 (三重大学大学院)
佐地 勉 (東邦大学医療センター 小児科)

III-S18-01~III-S18-06

[III-S18-05] 成人心筋炎の診断と慢性心筋炎-問題点は何か

猪又 孝元, 阿古 潤哉 (北里大学医学部 循環器内科学)

Keywords:心筋炎, 診断, 予後

今から10数年前に米国より、「劇症型心筋炎は通常の急性心筋炎に比して、予後が良好である。」との報告がなされたことがある。当時わが国で行われたレジストリーでは、劇症型心筋炎の急性期死亡率は4割に及び、診療ガイドラインの作成とも絡め業界は紛糾した。結局のところ、劇症型とする定義とともに、慢性心筋炎の取り扱いの違いが診断の論点として浮かび上がってきた。急性発症の心筋炎、特に重症例は、2つの病型に分かれる。ひとつは、血行動態が急速に破綻した劇症型心筋炎であり、多くは急性ウイルス感染による。もう一方は、拡張型心筋症様の臨床病型で、急性心不全発症後に行った心筋生検でなかば偶然に見つかった慢性心筋炎である。前者への移行を予測する報告は、決めて少ない。診断根拠となっている組織学的所見、近年では心筋生検に加え心臓MRIが重要視されるが、いずれも劇症化を予見するに至っていない。実臨床の場では、「劇症化するかもしれない」とマメに経過を追うしかない。超急性期をさえ乗り切れば正常に復すことすらある病態であることから、短期予後の予測が重要である。一方で後者は、徐々に心機能が低下し、心臓死もしくは補助循環・移植といった転帰を辿る。病因論的にウイルス性と自己免疫性とに大別し,それぞれに抗ウイルス療法または免疫抑制療法を行う治療戦略が提案されてきたが、定着していない。はたして、治療に結びつく病因論的診断なのか、あらためてその方向性が問われている。いずれにせよ、診断の観点からこの両者の鑑別は、急性期においてときに困難である。心筋炎の予後を広義に議論する際、劇症型の定義とともに、慢性心筋炎の心不全急性増悪という別病型をいかに区別するかに留意せねばならない。