第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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シンポジウム

シンポジウム18(日本小児循環器学会 心筋生検研究会ジョイントセッション)
心筋炎診療の新展開 

Sat. Jul 18, 2015 10:30 AM - 12:00 PM 第2会場 (1F ペガサス B)

座長:
今中 (吉田) 恭子 (三重大学大学院)
佐地 勉 (東邦大学医療センター 小児科)

III-S18-01~III-S18-06

[III-S18-06] 成人急性心筋炎治療の現況と問題

坂田 泰史 (大阪大学大学院医学系研究科 循環器内科学)

Keywords:心筋炎, 心不全, 補助循環

心筋炎は、急性心筋炎と慢性心筋炎があり、同じ病態かどうかわかっていない。成人の心筋炎治療について、複数の問題点がある。まず1つ目は急性心筋炎を診療所レベルで疑うことができるかである。従来急性心筋炎に特異的所見とされる、発熱を伴う感冒様症状、胸痛、房室ブロック、嘔吐・下痢などの腹部症状は日本循環器学会心筋炎治療ガイドライン作成班会議報告でもそれぞれ、63%、44%、25%、23%に過ぎない。また、心筋炎で確定した心筋炎のうち上気道感染既往歴を持つものは36%に過ぎないという報告もあり、このような「特異的所見」により診療所レベルで診断するのは現状では困難と考えられる。この問題点が初期迅速対応を困難にしている可能性がある。今後期待されるのはバイオマーカーであるが、トロポニンも特異性としては十分とはいえず新たな発想が必要である。別の問題点として、補助循環導入の種類、タイミングがある。急性心筋炎では速いスピードで病態が悪化し、数時間の間に歩いて来院された患者が血圧が維持できないような状況に陥ることがある。いたずらに強心薬などで観察し、循環破綻をきたした後に緊急でPCPSを導入すると、合併症により症例を失ってしまうことになる。上記のガイドライン作成班会議報告でも、PCPS下での死亡原因のうち下肢阻血が23%と高率に認められることが報告されている。よって、まだ循環動態が維持できている間に補助循環を導入することが必要である。また、急性心筋炎では30日など長期にわたる補助循環サポートにより心機能が回復症例も少なくない。現状のPCPSではそのような長期間にわたり状態を維持できないことを銘記し、必要に応じて速やかに補助人工心臓に移行することが望まれるが、そのタイミングも不明確であり、またそのための手段も限られているのが現状である。