第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

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シンポジウム

シンポジウム20
小児循環器医の社会貢献

Sat. Jul 18, 2015 10:30 AM - 12:00 PM 第3会場 (1F ペガサス C)

座長:
西畠 信 (総合病院鹿児島生協病院)
小川 俊一 (日本医科大学)

III-S20-01~III-S20-05

[III-S20-01] 思春期前期の学童への「いのち」の始まりと終わりの授業

西畠 信 (総合病院鹿児島生協病院 小児科)

Keywords:死生学教育, 思春期前期, 生命の重さ

【背景】現代社会で人の生と死の場面にこどもが立ち会うことが少なくなる一方、ゲームやITなどのバーチャルな世界での悲嘆を伴わない死が日常的に経験され、少年犯罪・自死・いじめ・虐待との関連が示唆されている。一方で我々は小児循環器の医師として、脳死臓器移植を典型として生命の質と重さを日々考える立場にある。
【目的】人の生と死に立ち会う医療者として思春期前期の学童に科学的に生命の重さを考える機会を提供する。
【授業の概要】学校医を務めてきた小学校の高学年の学童(各学年116~170人)を対象に、学校側と病院の看護師・助産師の協力のもとに、2005年から年1回、5年生に「いのちの始まり(性教育)」を、6年生に「いのちの終わり(死)」の授業を各2時限(1時間30分)ずつ総合学習として行った。
授業はいずれも、1.個々の生命の始まりと終わりを科学として説明、2.体験学習、3.医療者として生命の重さを感じてきた経験を伝える、で構成した。生命の始まりについては受精・妊娠・出産の話、体験学習(妊婦ベスト、出生体験、乳児の人形を抱く)、胎児に触れる(妊婦の腹部触知、ドプラ音聴取)等を行った。生命の終わりについては人の生命に限りがあることと様々な死の話(がんの終末期、戦時下での死、こどもの死の看取り等)、生命現象の実感(経皮酸素モニター、聴診器、脈拍蝕知等)に加え、死にゆく本人と残される者のことばに触れ、生命が様々な形で引き継がれること(遺伝子、文化・技術の継承、臓器移植)を話した。
【考察】生徒・家族への事前アンケートと事後の感想文・アンケートによると、授業は子どもと家族にとって生と死に関して考える機会になっていた。今後の課題として、授業に関する家族・教師の意見を取り入れ、できるだけ客観的な評価をする必要がある。
【結語】死生学教育への参加は、救命と看取りの現場を経験する機会を持つ小児循環器医の役割と考えるようになった。