[III-S20-03] モンゴルにおける先天性心疾患に対するカテーテル治療
キーワード:モンゴル渡航, カテーテル治療, 医療支援
【背景】限りある資金で多数の治療が可能という面で、カテ治療は外科手術よりも途上国支援に向いている。モンゴルに渡航して先天性心疾患のカテーテル治療を行うハートセービングプロジェクト(HSP)は、今年15年目を迎えた。これまでの実績と今後の課題を報告する。【医療事情と実績】モンゴルでは、小児心疾患患者は国立母子センターに集まるが、この病院には当初血管造影設備がなく、現在も心臓外科はない。成人循環器センターである国立第3病院には血管造影設備と心臓外科があり、単純な小児心臓手術は行われているが成績は不良である。HSPは、2001年から主として母子センター患者を対象に、1回のカテ治療で根治が期待できる患者として動脈管開存(PDA)と肺動脈弁狭窄(PS) を主に選出し、第3病院に移して可能な限り多数を治療してきた。2014年末までの通算実績は、心エコー検査総件数1,400、カテ総件数489、中期経過良好なカテ治療後の患者総人数398で、内訳は、PDAコイル閉鎖131, Duct Occluder(DO)閉鎖217、PSバルン形成(PTPV)43、その他のカテ治療7である。当初コイルで閉鎖したPDAは、現地医師へ技術移転を視野に2005年にAmplatzer DOを導入し、近年は欧州認可の安価なDOを直輸入している。弁形成バルンも、直輸入等で2014年からコスト低減が可能となった。【展望と課題】HSPのゴールはモンゴルの小児循環器医療の自立においている。2014年秋に母子センターに血管造影室が新設され、医師の自立の機運が高まってきた。高度熟練を要しないデバイスの格安価格での導入は、経済発展が途上のモンゴルには福音と考えられ、現地医師によるPDA閉鎖やPTPVに道を開くことになった。モンゴルには複数の国から複数の支援プロジェクトが入っている上に、医師は技術習得を独り占めにする、患者からデバイスや薬剤の斡旋料をとる等の傾向がみられ、プロジェクト間の調整とチームワーク医療や医療倫理の啓発が今後の課題である。