第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム(多領域専門職部門)

シンポジウム3(多領域専門職部門)
小児心疾患-術中の麻酔と人工心肺管理 up to date-

2015年7月18日(土) 10:30 〜 12:00 第7会場 (1F シリウス)

座長:
安永 弘 (聖マリア病院)
仁尾 かおり (三重大学)

III-TRS3-01~III-TRS3-04

[III-TRS3-02] 小児心臓手術の麻酔

武藤 理香 (東邦大学医療センター大森病院 麻酔科学講座)

心臓血管外科手術における麻酔は、一般外科系手術のそれと共通している面もあるが、麻酔維持に関しては異なる面が多々ある。これらを織り交ぜて言及する。術前評価 新生児、乳児、幼児と年齢による着眼点の違いを把握する。新生児は在胎週数、日齢、手術時の体重・身長、普段のSpO2などの他、ビタミンKの摂取、頭部エコー、新生児スクリーニング検査の結果、出血傾向や神経筋疾患の家族歴の有無などを把握する。乳児以降は、児の成長発達の遅滞の有無、幼児ではADLなども問診・診察する。また、乳児以降では上気道感染の罹患率が高くなるため、術前からの治療も必要な事が多い。【麻酔導入】麻酔は全身麻酔で行うことがほとんどである。麻酔は前日から始まっているといっても過言ではない。術前の経口摂取や点滴の必要性の判断、点滴の投与量を指示する。極端な脱水は麻酔導入後の低血圧を招き、特にチアノーゼ性心疾患の場合では、低血圧は更なる低酸素血症を招くため注意が必要である。麻酔導入は、児の血行動態を考えて、吸入麻酔ガスによる導入か静脈導入を行う。【麻酔維持】麻薬・筋弛緩薬・静脈麻酔薬と少量の吸入麻酔薬を用いて維持する。確保するラインの部位にも、病態や既往歴によっては注意を払う。人工心肺が開始されたら、鎮静と鎮痛、筋弛緩薬を中心に維持する。人工心肺からの離脱時も、姑息手術、根治術かによって血行動態の管理が異なるが、いずれにせよ適切な肺血管抵抗の維持を考慮する。人工心肺離脱後は児の病態によって血行動態(血圧・CVP・脈拍数・SpO2など)の至適目標値を設定する。麻酔維持は術後管理に繋がるように計画しなくては、意味がない。麻酔科医のみが満足するような管理であってはならない。できるだけ術前の循環器カンファレンスに出席し、患児に関する情報を得たり、他科の医師から教授される事が重要である。