第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

要望演題

1-04 複雑心奇形

要望演題14
Heterotaxy

2015年7月18日(土) 11:10 〜 12:00 第5会場 (1F アポロン A)

座長:
篠原 徹 (近畿大学)
塩野 淳子 (茨城県立こども病院)

III-YB14-01~III-YB14-05

[III-YB14-01] 当院における近年の心房内蔵錯位症候群の予後の検討

武井 黄太1, 武田 充人1, 山澤 弘州1, 古川 卓朗1, 泉 岳1, 本田 護1,2, 浅井 英嗣3, 橘 剛3 (1.北海道大学大学院 小児科学, 2.自衛隊札幌病院 小児科, 3.北海道大学大学院 循環器外科学)

キーワード:心房内蔵錯位症候群, 多脾症候群, 無脾症候群

【背景】心房内蔵錯位症候群(HS)はその合併奇形により幅広い臨床像を示し、過去の報告では多脾症候群(PS)に比べ無脾症候群(AS)は予後不良で生存率は21~60%と報告されている。しかし、近年の管理・手術手技の向上を考慮した再検討が必要である。【目的】近年のHSの予後を明らかとし、問題点を検討すること。【方法】2010年1月~2014年12月に出生し、当院で手術治療を行なった連続29例を対象に、臨床データを診療録より収集し検討した。【結果】29例中胎児診断例は19例(66%)で、中央値27(範囲20-36)週で胎児診断された。他に房室ブロック(AVB)による徐脈を呈したPSの2例(19・20週)で人工妊娠中絶が選択された。出生した29例はAS19例(66%)、PS10例(34%)で、在胎週数38(26-41)週、出生体重2804(610-3580)gであった。早産児は8例で、うち2例はAVBによる徐脈で胎児水腫を来たし在胎28・35週に娩出、他の2例は双胎であった。ASは全例Fontan手術適応と診断され、11/19例(58%)が生存している。一方PSは7/10例が二心室修復適応と診断され5例(50%)が生存している。総肺静脈還流異常(TAPVC)は9例(AS 8例、PS 1例)で合併し、生存はTAPVCに対する治療介入は要さなかった2例のみで、いずれもGlenn手術に到達できていない。AVBはPS 4例に合併し全例で生後早期にペースメーカー留置を施行したが、生存は1例で重度の心不全で治療を要している。房室弁逆流で手術を要したのはAS 2例で生存は1例。胆道閉鎖症(CBA)はPS 2例に合併し肺高血圧と術後敗血症のためいずれも死亡。莢膜抗原を有する細菌による重症感染症を合併した症例は認めなかった。多変量解析の結果、独立した生命予後の規定因子はHS全体で手術時体重、ASではTAPVCであった。【結論】近年においても、HSではTAPVC合併例や低体重での手術例で予後不良であった。またAVB、CBAの合併も予後を困難にすると考えられた。一方でこれらの合併症のないHSの予後は良好であった。