[III-YB15-01] 小児開心術周術期における心電図高周波電位測定の有用性
Keywords:高周波心電図, 心機能, 小児開心術
【はじめに】小児開心術周術期に非侵襲的かつリアルタイムに心機能を測定する方法は限られている。心室の電気的活動を表す心電図高周波数QRS成分のroot mean square電位(RMS電位)は、周術期において心機能の推移を示す指標として応用できる可能性がある。【方法】RMS電位を手術前から大動脈遮断解除後72時間まで連続的に測定した。Frank誘導X,Y,Z軸の位置で心電図電極を貼付、心電図波形より60Hz以上の高周波数電位を抽出した。１心拍毎にQRS波形を得た後、1msec毎の電位を二乗、加算、その平均電位の平方根をRMS電位(mV)として計測した。RMS電位は手術前電位を基準として実測値を%RMS電位として記録した。【対象】2012年1月から、2013年12月まで、人工心肺を使用した手術を行った14症例。(VSD；7、ASD；2、TOF；2、DORV；1、AVSD；1、UVH；1)平均月齢は14ヶ月(1-90)、平均体重は7.5kg(3.4-21)。【結果】大動脈遮断(ACC)解除後の%RMS電位は、解除後1分で手術前と比較して22.0±12.5%まで低下後、解除後5分(35.4±15.4%)、解除後15分(53.3±18.9%)、解除後30分(66.8±18.6%)と経時的に回復、解除後1時間(82.9±17.8%)で手術前の水準まで回復した。ACC時間と解除後2時間から6時間までの%RMS電位回復率間に相関傾向を認めた。(r=-0.537 p=0.058) また、ACC解除直後から解除後1時間までのCK-MB分画の増加率が大きい症例程、ACC解除後30分から2時間までの%RMS電位回復率が低い傾向が認められた。(r=-0.58, p=0.04) ACC解除後2時間から12時間までの%RMS電位回復率と、ACC解除後48時間(r=-0.6, p=0.03) および72時間(r=-0.57, p=0.044)のinotrope使用量間に相関を認めた。【考察・結語】小児開心術周術期のRMS電位変化は、周術期の心筋障害および心機能の変化に連動して変化している可能性が示唆された。周術期におけるRMS電位測定は、リアルタイムかつ非侵襲的に心機能を明示する新しい指標として利用できる可能性がある。