[JJS-01] MR Coronary Angiographyによる川崎病冠動脈後遺症の石灰化狭窄病変の描出:その形態と機能の評価
Keywords:MRCA, Black blood 法, 円周状石灰化
近年、成人動脈硬化性冠動脈障害の描出においてMDCTが普及した。MDCTはとりわけ石灰化病変の描出が鋭敏であり狭窄病変の検出の指標とされている。一方、川崎病の冠動脈障害はしばしば著しい石灰化を伴うことが特徴であり、1997年、我々は川崎病の石灰化の形状を血管内エコーにより、瘤の壁の内腔側に点状(I)、瘤の周囲に円周状(II)、肥厚した血管壁の内膜周囲の狭窄部(III)と3分類し報告した。また2006年にはMRCA による石灰化像を報告した。すなわちMRCAのシーケンスで血流を白く描出するbalanced steady state free precession(SSFP) 法においても、血流を黒く、血管壁,血栓を灰色に描出するblack blood turbo spine echo(BB)法においても、石灰化病変は黒いラインとして低信号で描出された。黒いラインは画像上他の低信号の組織と同化し判別しにくいため、CAG(20箇所の石灰化病変)と比較し、SSFPで35%(7箇所),BB で65%(13箇所)の低描出率であった。しかし、MRCAは血管全周を取り巻く重度石灰化部位においても、アーチファクトがなく、MDCTでは描出不可能な重度石灰化部位の冠動脈内腔を明瞭に描出し、BB法では同時に血管壁の肥厚や壁在血栓なども描出した。BB法で描出された石灰化(II)の形状のうち5箇所は瘤の壁に存在し狭窄は伴わず、他の(II)と(III)の8箇所は血栓閉塞した瘤の壁、再疎通血管壁や内膜が肥厚した局所性狭窄部であった。すなわち、MRCAの有用性は石灰化病変の検出能力ではなく、年余を経て重度化する石灰化症例においても内腔、外壁を明瞭に描出する点である。このため、 MRCAにおける経過観察では石灰化そのものに対しては詳細な検討の必要性は要求されていない。