[ML02-01] 胎児・小児の受動喫煙と循環器疾患
Keywords:受動喫煙, 胎児性タバコ症候群, 妊婦の喫煙
タバコ煙中に存在する有害物質による健康被害は多臓器に渡り、その影響は予想を遥かに超えるものがある。受動喫煙(secondhand smoke、SHS)もまた同様である。特に臓器の発達段階にある胎児が受動喫煙に曝露されると先天奇形の発生のみならず、成長後にメタボリック症候群や血管機能異常などが出現することがわかっている。ここでは胎児性タバコ症候群(Fetal Tobacco Syndrome、FTS)および成長後に出現する動脈硬化について文献的検索を行い、私見を交えて報告する。FTSは胎児性アルコール症候群と比べ認知度は低く、診断基準も確立されていない。特異顔貌が認められないことがその理由の一つである。しかし、胎児期のSHSにより低出生体重児、早産、流産のみならず先天性心疾患、口唇口蓋裂、腹壁破裂、四肢奇形、偏平足、頭蓋骨早期癒合、臍ヘルニヤ等が発生するオッズ比は高い。一方、妊娠中喫煙した母親から生まれた児は低出生体重で生まれ、出生後は急激なキャッチアップにより体重増加傾向になる。その後成人した時にメタボリック症候群でみられる肥満、血圧上昇、脂質異常、動脈壁肥厚・石灰化およびそれに伴う血管機能の異常などが起こる。ニコチンを始め有害物質は胎盤や母乳を通じて容易に児へ移行するため胎児期・新生児期の受動喫煙の影響は深刻である。環境省エコチル調査によると25歳未満妊婦の喫煙率は9%、妊娠がわかって禁煙したのは26%であった。すなわち25歳未満妊婦の1/3の胎児は上記リスクを背負っていることになる。従って、できるだけ早い時期での防煙教育が望ましい。