第51回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

モーニングレクチャー

モーニングレクチャー3
次世代シークエンサーを用いた心筋疾患の新規診断療法

2015年7月17日(金) 08:00 〜 08:30 第5会場 (1F アポロン A)

座長:小川 潔 (埼玉県立小児医療センター)

ML03

[ML03-01] 次世代シーケンサーを用いた小児心筋疾患の新規診断法

小垣 滋豊 (大阪大学大学院医学系研究科 小児科)

キーワード:心筋症, 遺伝子, 次世代シーケンサー

特発性心筋症はかつて「原因不明の心筋疾患」とされてきたが、近年その原因が明らかにされつつある。中でも遺伝子的要因については、家系解析を用いたサルコメア関連遺伝子異常の報告に始まり、遺伝子変異の部位と臨床的重症度の関係性についても指摘されてきた。近年、次世代シーケンサーの登場により、疾患の原因遺伝子探索に大きなパラダイムシフトが生じている。これまでは単一の原因遺伝子を推定し、遺伝子診断により仮説を検証するというアプローチが一般的であり、遺伝子診断は確定診断の為に使用されてきた。次世代シーケンサーを利用することにより、相当数の遺伝子を同時に解析することが可能となったことから、遺伝子診断をスクリーニング目的に使用するという、今までに無いアプローチが実現可能となった。また家族内発症を持たない孤発症例や、発症頻度の非常に低い稀少疾患の原因遺伝子解析も可能になったとされる。しかし一方で、シーケンス自体は経験の無い施設においても受託解析等を用いることにより高水準の結果を得ることはできるものの、単一遺伝子多型(SNP)の除外等、その結果の解析・解釈には難しい課題が残っており、熟練した知識と技術が必要であることも忘れてはならない。我々は、小児期発症の特発性心筋症患者血液からゲノムDNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いて、原因遺伝子変異の探索を試みている。特に重症心不全をきたす症例を中心に解析をすすめ臨床への還元をめざしている。その結果を紹介するとともに、次世代シーケンサーを用いた心筋症の遺伝子変異探索の長所・短所・注意点について示す。